抗血栓療法

DAPT 血小板機能測定とクロピドグレル/プラスグレルの選択

VerifyNowを用いて血小板活性を評価し、それに応じてクロピドグレルあるいはプラスグレルの容量調整・薬剤変更を行う方法は、臨床的アウトカムに差がないことが以前報告されている(1−2)。

これは、Roche Diagnostics社の測定器を用いて血小板機能検査を行い、その結果に応じてクロピドグレルかプラスグレルのいずれかのDAPTへの割り付けを行い、臨床的アウトカムについて検証したRCTである。

Guided de-escalation of antiplatelet treatment in patients with acute coronary syndrome undergoing percutaneous coronary intervention (TROPICAL-ACS): a randomised, open-label, multicentre trial.
Lancet. 2017 Aug 25. pii: S0140-6736(17)32155-4.[Epub ahead of print]

◇この論文のPICOはなにか
P:バイオマーカ陽性のACS
I:クロピドグレルまたはプラスグレルのDAPTへ割り付けを、血小板活性を評価し行う
C:プラスグレルのDAPT
O:12ヶ月後のnet clinical benefit(心血管死、心筋梗塞、脳梗塞、BARCgrade2以上の出血)

procedure:

(本文から引用)

対照群は12ヶ月のプラスグレルを用いたDAPT。介入群はprimay PCIを施行し退院7日後までプラスグレルのDAPTを継続。その後、プラスグレルからクロピドグレルへ切り替え7日後に血小板活性を評価。血小板活性が高くなければクロピグレルを継続し、血小板活性が高い場合にはプラスグレルへ戻す。

血小板機能はRoche Diagnostics社の測定器を使用。

◇試験の概要
デザイン:RCT(オープンラベル、非劣性試験)
地域:オーストリア、ドイツ、ハンガリー、ポーランドの33施設
登録期間:2013年12月2日〜2016年5月20日
観察期間:12ヶ月
必要症例数:secondary endpointに対し2600例(primary endpointだけなら2344例)
症例数:2610例(介入群1304例、対照群1306例)
解析:PP解析
スポンサー:企業の関与あり(Roche Diagnostics、イーライリリー、第一三共など4社)

◇患者背景

(本文から引用)

平均年齢60歳と若め、男性20%、糖尿病20%、腎不全3%。


(本文から引用)

1枝病変と多枝が半分ずつ、LAD lesionが多い、lesion classificationは様々、DESが80%。

◇結果

(本文から引用)

◇まとめと感想
理屈では、CYP2C19のPMであれば、血栓症予防にはクロピドグレルよりもプラスグレルの方がいい。PMでなければ、プラスグレルよりクロピドグレルの方が出血リスクは抑えられるだろう。クロピドグレルの効果が表れているか検査により判断できれば、効果を示していないPMに対してはプラスグレルを継続することは理にかなっている。

この試験デザインなら、出血が抑えられることが期待できたが、有意なイベントの低下は認めなかった(塞栓症と出血の複合エンドポイントで非劣性が証明されただけ)。

しかし、このTROPICAL-ACS試験で使用されたRoche Diagnostics社の測定器でも、またARCTIC試験やTRRIGER-PCI試験で用いられたVerifyNowでもそうだけど、血小板機能を評価して、それに応じて薬剤を変更したり調整したりする方法は、臨床的アウトカムを改善しないみたい。

理屈としては正しいけど、血小板機能をみるその方法がまずいのか。体内での血小板機能と検査での血小板機能の乖離みたいなものがあるのかも。

CYP2C19のPMの頻度、日本人では約20%、白人では3%程度と言われており、この試験では白人が99%でありPMの絶対数が少なかったから、結果に差が出なかった可能性はある。日本人なら、結果が違っていたかもしれない。

(1)J Am Coll Cardiol. 2012;59(24):2159-64.
(2)N Engl J Med. 2012;367(22):2100-9.