セマグルチド(商品名:オゼンピック)は注射のGLP-1作動薬。
糖尿病薬の中でも心血管イベント抑制効果のある数少ない薬剤で、その効果については以前記事にしました。
セマグルチド群で、ハザード比0.74(0.58−0.95)と有意に心血管イベント(心血管死+脳梗塞+心筋梗塞)が減っています。
その中では、心血管死には両群にほとんど差はありませんでしたが、脳梗塞や心筋梗塞でイベントが減って差がでているものと考えられます(ハザード比は脳梗塞:0.61[0.38-0.99]、心筋梗塞:0.74[0.51-1.08])。
すごく良い結果ですが、考えるべき点としては、心血管イベントのNNTは2.1年で91と小さくないので、コストに見合った治療なのかという点と、日本人ではNNTがもっと高くなるだろうという点だと思っています。
で、そのセマグルチドですが、以下の効果により、血糖の改善、体重減少をもたらします。
・血糖値に依存してインスリン分泌を増強
・胃の内容物の排泄を遅らせる
・食後のグルカゴン分泌抑制
・食欲を抑え、食事量を減らす
体重減少の効果があるため、日本でもダイエット目的に自由診療で処方しているところがあるそうです。
たしかに、糖尿病を発症していない肥満の方が減量に成功できれば、血糖・血圧・脂質への良い影響があり、健康寿命の延伸にもつながりそうなので、インパクトが大きいように思います。
このSTEP試験は、糖尿病のない肥満の方を対象とし、セマグルチドの減量効果を検証したRCTです。
Once-Weekly Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity
N Engl J Med 2021; 384:989-1002
P:糖尿病のない肥満で、BMI≧30 or BMI≧27+併存疾患
併存疾患:高血圧、脂質異常、OSAS、心血管疾患
I:セマグルチド2.4mg皮下注
C:プラセボ皮下注
O:5%以上の体重減少
セマグルチドは 0.25mgから開始し、16週かけて4週おきに増量。
副作用で増量できなければ、2.4mg以下の維持量を許容。
Method
デザイン:double blind RCT
地域:アジア、欧州、北米、南米など16ヶ国
観察期間:68週
症例数:例(セマグルチド群1306例、プラセボ群655例)
解析:ITT解析
スポンサー企業:Novo Nordisk社
結果
【患者背景】
平均46歳、3/4が白人でアジア人は12%、体重105kg、BMI38
SF-36:健康関連のQOLスコアで、高い方がQOLが高い
IWQOL-Lite-CT:QOLに対する体重の影響
セマグルチド群 | プラセボ群 | ||
5%以上の体重減少 | 86.4% | 31.5% | 11.2(8.9-14.2) |
体重の変化率 | -14.85% | -2.41% | -12.44(-13.37to-11.51) |
セマグルチド群で、SF−36やIWQOLなどのQOLスコアは有意に改善。
血圧・血糖・脂質も改善。
HbA1c:-0.29(-0.32to-0.26)
空腹時血糖:−7.87mg(-9.04to-6.70)
収縮期血圧:-5.10(-6.34to-3.87)
拡張期血圧:-2.41mmHg(-3.25to-1.57)
HDL-CとLDL-Cも4%ぐらい改善。
嘔気・嘔吐・下痢・便秘・ディスペプシアなどの副作用は、セマグルチド群で多かった。
BMI38、BW105kgの人が、15kgぐらい体重が落ちて、BMI33、体重90kgになるイメージ。
セマグルチド群で体重が減ったのは食事量が減ったため(脳への直接的・間接的な作用で食欲を抑える)。
最初の1年ぐらいで体重がすーっと落ちて、その後も低下傾向だけどほぼ横ばいに近い。
さらに続けても効果は期待できないのかもしれない。
でも、やめると体重は増えてしまいそうです。
両群とも、消費カロリー−500kcalの栄養指導、週150分以上の運動指導がされていたので、肥満で食事運動療法がうまくいっていない人にはいいかもしれません。