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ω3脂肪酸による心筋梗塞後のリモデリング抑制 OMEGA-REMODEL試験

Effect of Omega-3 Acid Ethyl Esters on Left Ventricular Remodeling After Acute Myocardial InfarctionThe OMEGA-REMODEL Randomized Clinical Trial
Circulation. 2016;134:378-391

《要約》
背景
魚油のω−3脂肪酸は心血管への有益性が報告されているが、ガイドラインに準じた治療を行っている陳旧性心筋梗塞での心筋リモデリングの効果については明らかではない。

方法
急性心筋梗塞患者患者を、高容量ω−3脂肪酸またはプラセボを内服する2群に無作為に割り付けた。高容量ω−3脂肪酸群180例、プラセボ群178例で、6ヶ月間内服を継続した多施設、二重盲検、プラセボ対象試験である。心臓の構造と心筋の性状を評価するため、baselineと治療終了後に心臓MRI検査を行った。主要評価項目は左室収縮末期容積指数(LVESVI)である。副次評価項目は非梗塞部位の線維化と左室駆出率(LVEF)と梗塞サイズである。

結果
ω−3脂肪酸によって、LVESVI(−5.8%、P=0.017)、非梗塞部位の線維化(−5.6%、P=0.026)は有意に低下した。per-protcol解析では、赤血球ω−3脂肪酸指数が高い群では、低い群よりLVESVIが13%低下した。加えて、ω−3脂肪酸群では、全身性及び血管性炎症バイオマーカーと心筋線維化が減少した。

結論
急性心筋梗塞患者がガイドラインに準じた照準的治療に加え、高容量ω−3脂肪酸を内服することで、LVESVI、非梗塞部位の線維化、炎症バイオマーカーが減少した。

◇この論文のPICOはなにか
P:急性心筋梗塞を発症した患者
I:EPA465mg+DHA375mgのカプセルを1日1回内服(ω−3脂肪酸群)
C:コーン油のカプセルを1日1回内服(プラセボ群)
O:6ヶ月後のLVESVI

inclusion criteria:21歳以上、症状が持続しトロポニンT>0.5ng/mlで造影で有意な冠動脈狭窄があること

exclusion criteria:心臓手術による二次的な心筋梗塞、生命予後1年未満、ω−3脂肪酸の適応である患者、妊娠、MRIの禁忌

◇baselineは同等か
characteristics1
characteristics2
この中だと、ω−3脂肪酸群でCABGの既往が有意に多い。βblockerとかACE阻害薬/ARBも同等。

characteristics-cmr
baselineのLVESVI・梗塞サイズに有意差なし。

◇結果
地域:米国、ボストン
登録期間:2008年1月〜2012年8月
観察期間:6ヶ月
無作為化:年齢(>70歳)と前壁梗塞でブロック化し、コンピュータによる無作為化を行った。
盲検化:二重盲検。ハードなエンドポイントなのでアウトカム評価者の盲検化の有無による影響はないと考えてよい。
必要症例数:記載なし
症例数:358例(ω−3脂肪酸群180例、プラセボ群178例)
追跡率:ω−3脂肪酸群73.9%、プラセボ群71.9%
解析:ITT解析
スポンサー:ω−3脂肪酸、プラセボはいずれも企業から提供(Glaxo SmithKline)

result

◇批判的吟味
・追跡率が低い。
・魚油から作ったEPA製剤は匂いでわかるので、盲検化が難しい。
・サロゲートエンドポイントの改善

◇感想
GISSI-Prevenzione試験ではOMI患者にω−3脂肪酸を投与することにより突然死が有意に減少した(虚血イベントは減らなかった)。ただ、90年代の試験であり現在のガイドラインに準じた治療とは異なる部分があり(βblockerやACE阻害薬/ARBの内服率が低い)、その結果を鵜呑みにすることには議論があった。そこで、2010年にOMEGA試験が行われ、現在のガイドに準じた治療を行っている患者群(βblockerやACE阻害薬/ARBの内服率が高い)を対象に、心臓突然死をエンドポイントにしてω−3脂肪酸とプラセボで無作為化試験を行っているが、心臓突然死は減らずGISSI-Prevenzione試験の結果は否定された形となった。

2007年に行われたJELIS試験は、心筋梗塞の一次予防・二次予防患者を対象に、ω−3脂肪酸の効果を検証したRCTであるが、一次予防群ではプラセボと変わらず、二次予防群では有意差がついたものの、その中身をみてみると不安定狭心症のみを減らしたという結果であった。これはPROBE試験であり、その解釈は慎重にならざるを得ない。

そして、2010年にOMI二次予防目的でω−3脂肪酸の効果を検証したALPHA OMEGA試験が行われ、ω−3脂肪酸の使用量が多くなかったことが影響しているかもしれないが、OMI患者の心血管イベントは抑えられなかった(こちらはJELIS試験と違い心筋梗塞・脳梗塞などのハードエンドポイント)。心筋梗塞や死亡を減らさないという点では、ALPHA OMEGA試験もJELIS試験も一致してるのかもしれない。

という流れの中で、EPA+DHA製剤を急性心筋梗塞を発症したばかりの人に内服させると、6ヶ月後のLVESVIが改善するというOMEGA-REMODEL試験の結果。追跡率が低く無作為化が維持できていない可能性があるので、ちょっと微妙かなと思ってしまう。ただ、リモデリングが抑えられれば、心不全入院・心不全死も抑えられる可能性があるし、GISSI-HF試験でも心不全患者を対象に、少し良い結果だったので、今後臨床的なエンドポイントで検証してもらいたい。