抗血栓療法

糖尿病合併冠動脈多枝病変へのCABG 抗血小板療法はアスピリン単剤で

Dual Antiplatelet Therapy Versus Aspirin Monotherapy in Diabetics With Multivessel Disease Undergoing CABG: FREEDOM Insights.
J Am Coll Cardiol. 2017 Jan 17;69(2):119-127.

◇この論文のPECOは?
P:糖尿病を有する冠動脈多枝病変でCABGを行なった患者
E:DAPT(アスピリン+クロピドグレル)
C:アスピリン単剤療法(ASA)
O:5年間の全死亡、心筋梗塞、脳梗塞

exclusion criteria:CABG後30日以内の死亡、アスピリンを内服していない、ワーファリンの内服

<デザイン、セッティング>
・FREEDOM試験(糖尿病を有する冠動脈多枝病変を対象に、PCIとCABGを比較したRCT)のpost hoc解析
・795例(DAPT群544例、ASA群251例)
・DAPT期間は0.98年(中央値)
・観察期間:平均5年
・COX比例ハザードモデル

<結果>

(本文から引用)

◇批判的吟味と感想
AHAのガイドラインでは、off-pump CABG(OPCAG)後の1年間の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)はclassⅠで推奨されており、on-pump CABGでは、DAPTを支持するデータが乏しく、classⅡbとなっている(1)。

糖尿病では、グラフト開存率の低下や死亡率上昇と関連があるが、糖尿病合併症例でもCABG後の1年間のDAPTは、5年での死亡率、心筋梗塞、脳梗塞を減少させなかった。

AHAのガイドラインではCABG後にDAPTが推奨されているとは言え、DAPT処方率は2/3と過去の観察研究よりも多かった。FREEDOM試験では、割付に関わらずクロピドグレルが提供されていたためかもしれない。1年間のDAPTでもASA単剤と出血に差はなかったが、この研究では、30日以内の死亡は解析から除外されているため、DAPTの出血リスクを過小評価するかもしれない。

post hoc解析なので結論めいたことは言えないが、DAPTがon-pumpCABGのアウトカムを改善しないという過去の報告と矛盾しない結果だった。

(1)Circulation. 2015;131:927-64