心不全

心不全 ACE阻害薬/ARB、β遮断薬の内服量と予後

Determinants and clinical outcome of uptitration of ACE-inhibitors and beta-blockers in patients with heart failure: a prospective European study
Eur Heart J. 2017 Mar 11. [Epub ahead of print]

◇この論文のPECOは?
P:HFrEF(<40%)
E/C:ACE阻害薬/ARBとβ遮断薬の内服量(0%、1−49%、50−99%、≧100%)
O:死亡、心不全入院

inclusion criteria:ACE阻害薬・ARB・β遮断薬が未投与、ガイドライン推奨量の半分未満

登録から3ヶ月をoptimization periodとして、その期間に主治医の判断でACE阻害薬/ARB、β遮断薬を増量する。optimization periodを終えた患者のみ解析に含める。

ガイドライン推奨量

<デザイン、セッティング>
・ヨーロッパ11ヶ国、69施設
・前向きコホート研究
・2100例(2516例のうち、optimization periodで151例が死亡、23例がイベントはなかったが脱落、242例はEF≧40%のため除外)
・観察期間:21ヶ月(中央値)
・COX比例ハザードモデル

ARBの20%、ACE阻害薬の27%、β遮断薬の12%が推奨量に到達。

<患者背景>

(本文から引用)


(本文から引用)

ほとんど白人で、平均年齢は60代後半、虚血が半分、AFも半分弱、腎機能は比較的保たれている。

<結果>
ACE阻害薬/ARBが低い容量となる予測因子:女性、低いBMI、低いeGFR、高いALP
β遮断薬が低い容量となる予測因子:高齢、低い心拍数(HR)、低い拡張期血圧(DBP)、うっ血兆候


(本文から引用)


(本文から引用)
ACE阻害薬/ARBは推奨量の50%に達しているか、β遮断薬は容量依存的に死亡率が異なるという、わりとキレイな曲線になる。


(本文から引用)
この研究では、増量できない理由についても調べられている。
A)推奨量まで到達
B)症状、副作用、心臓以外の臓器障害
C)その他

B、Cの容量がどれぐらいだったかはわからない。

◇感想
ACE阻害薬/ARBでは、推奨量の半分以下の場合、死亡のハザード比が1.5−1.7倍に。β遮断薬では、容量依存的にハザード比は増加する。

増量できない予測因子としては、ACE阻害薬/ARBでは、女性、低いBMI、低いeGFR、高いALPが挙げられているが、女性やALPになぜ関連があるかはわからない。また、β遮断では、高齢、低い心拍数(HR)、低い拡張期血圧(DBP)、うっ血兆候があげられており、これはまさに実臨床通りといった感じ。

白人を対象にしていることや、日本での最大容量は欧米より少ないという点に違いはある。この研究ではACE阻害薬/ARB推奨容量の50%以上で推奨量と同程度の死亡率だったが、日本人ではそれがどれくらいの量なのかわからない。

まあ、ACE阻害薬/ARBやβ遮断薬は副作用がなければ増やしていくというスタンスでよいだろう。