心不全

心不全のない心筋梗塞 1年後の生存率とβ遮断薬

β-Blockers and Mortality After Acute Myocardial Infarction in Patients Without Heart Failure or Ventricular Dysfunction
J Am Coll Cardiol. 2017;69(22):2710-2720.

◇この論文のPECOは?
P:AMI(STEMIとNSTEMI)
E/C:β遮断薬内服の有無
O:1年後の死亡率

<デザイン、セッティング>
・イギリス
・2007年から2013年のデータ
・前向きコホート研究
・179810例
・院内死亡、すでにβblockerが処方されている、心不全、LVEF<30%、ループ利尿薬の使用、100歳以上は除外
・観察期間:1年
・プロペンシティスコアマッチ

<患者背景>


(本文から引用)
トロポニンのピーク値が低い。CAGをやってない症例も多い。冠動脈インターベンションが施行されたのは半分程度。

<結果>

(本文から引用)
STEMI、NSTEMIにかかわらず、β遮断薬の効果なし。

◇感想
AMIに対するβ遮断薬は、ガイドラインによって推奨度が異なる。AHA/ACCではすべてAMI患者に推奨されており、ESCでは心不全や左室収縮不全がない症例ではclassⅡaである。

心不全や左室収縮不全のない症例を対象にβ遮断薬の効果を検証したRCTはない。このデータは約18万人の前向きコホート研究なので、β遮断薬の効果を調べるにはパワーは十分と思われる。

患者背景についてだが、トロポニンのピークの中央値は低く、ほんとに軽いAMIが多い。この結果を、たとえばピークCKが2000ぐらいの心不全がないAMIにも適応できるのかはわからない。そういう患者でもβ遮断薬の効果がないと言っていいのかどうなのか。

少なくとも、β遮断薬が予後を悪化させているわけではないので、血圧や心拍数が許容できるなら処方していても悪くないし、血圧や心拍数が低いのにあえて入れる必要はないということだろう。