虚血性心疾患

n-3不飽和脂肪酸の心血管イベント抑制効果 STRENGTH試験

観察研究では、魚の日常的に食べることと、心血管イベントの抑制には関連があるとされています。

魚油に含まれるn-3不飽和脂肪酸の効果と考えられます。

しかし、n-3不飽和脂肪酸を内服すれば心血管イベントが抑えられるのかについては、今までのRCTではあまり良い結果は報告されていません。

1990年代に行われたGISSI-Prevenzione試験では、急性心筋梗塞発症後3ヶ月以内の人を対象として、n-3不飽和脂肪酸1g/日内服することで、心血管イベント(全死亡、突然死、心筋梗塞など)が低下したことが報告されていますが(相対リスク0.59[95%CI:0.36−0.97])、その後に行われたRCTでは、心筋梗塞や心臓突然死などを抑える効果はなかったようです1-3)

JELIS試験では二次予防で効果がありましたが、オープンラベルのソフトエンドポイントです。

それが、2019年のREDUCE-IT試験では、ハイリスク(二次予防が70%)の方を対象として、EPA4g/日で見事に心血管イベントが減っていました(HR:0.75[CI95%:0.68-0.83])。

今までのRCTはどれもn-3不飽和脂肪酸が数百mg/日だったので、1日4gという量がよかったのかなと思っていました。

Effect of High-Dose Omega-3 Fatty Acids vs Corn Oil on Major Adverse Cardiovascular Events in Patients at High Cardiovascular RiskThe STRENGTH Randomized Clinical Trial


JAMA. 2020;324(22):2268-2280.

PICO
P:二次予防を含めたハイリスク患者
・二次予防
・DM+他のリスク
・一次予防だけどリスクあり
I:n-3不飽和脂肪酸(omega-3CA)4g/日
C:コーン油
O:心血管イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞、冠血行再建、入院が必要な不安定狭心症)

Method
デザイン:RCT(double blind)
地域:北米、欧州、南米、アジア、南アフリカなど22ヶ国
登録期間:2014年10月〜2017年6月
観察期間:42ヶ月
症例数:13078例(各群6539例ずつ)
解析:ITT解析
スポンサー企業あり

結果
アジア人10%、冠動脈疾患の既往55%、糖尿病70%、高容量スタチン内服50%

omega-3CA群 プラセボ群 ハザード比
primary endpoint 12.0% 12.2% 0.99(0.90−1.09)
心血管死 3.5% 3.2% 1.09(0.90-1.31)
非致死的心筋梗塞 3.3% 3.5% 0.97(0.81-1.17)
非致死的脳梗塞 2.2% 1.9% 1.14(0.90-1.45)
冠血行再建 6.3% 6.7% 0.94(0.83-1.08)
不安定狭心症 1.3% 1.6% 0.84(0.63-1.12)


primary endpoint:心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞、冠血行再建、入院が必要な不安定狭心症

omega-3CA群で心房細動の発生が多かった(HR:1.69)。

サブグループ解析では、アジア人、二次予防、エゼチミブ内服あり、hsCRP≧0.2では、omega-3CA群でfavorable。

ベースラインのHDLやTGの値では差はなかった。

冠動脈疾患の二次予防とハイリスクの一次予防が半々の集団で、1日4gのn-3不飽和脂肪酸を内服しても、心血管イベントは抑えられないという結果。

サブグループ解析では、アジア人、二次予防などでomega-3CA群でよかったので、その群ではもしかしたら効果が期待できるのかも。

あとは、REDUDE-IT試験ではEPA4gだったので、EPAが多いといいのかもしれません(REDUCE-IT試験で対照群が内服していた鉱油が悪かったという話もあるみたいですが)。

ちょっと微妙な結果でしたが、それでも私は青魚を食べたいと思います。

1)Circ 2010;122:2152-2159
2)NEJM 2010;363:2015-26
3)NEJM 2013:368;1800-1808