Effect of Evolocumab on Progression of Coronary Disease in Statin-Treated PatientsThe GLAGOV Randomized Clinical Trial
JAMA. Published online November 15, 2016 [Epub ahead of print]
重要性
高容量のスタチン療法によるLDLコレステロールの減少は、冠動脈の動脈硬化の進展を抑制する。PCSK9阻害薬はスタチンを内服している患者のLDLコレステロールを低下させるが、この薬剤の冠動脈の動脈硬化に対する効果は評価されていない。
目的
スタチンによる治療を受けている患者で、PCSK9阻害薬による冠動脈の動脈硬化の進展に対する効果を検証する。
デザイン、セッティング、患者
GLAGOV試験は、多施設、二重盲検、プラセボ対照、無作為化試験で、2013年3月3日から2015年1月12日に登録された。北米、欧州、南米、アジア、オーストラリア、北アフリカの197施設から968例が組み入れられた。
介入
冠動脈造影で狭窄病変がある患者、月に1回エベロクマブ420mg、またはプラセボを皮下注する群のいずれかに無作為に割り付けた。投与期間は76週で、スタチンも内服している。
アウトカム
主要評価項目は、ベースラインから78週の間のプラーク体積率(PAV)の変化率である。PAVは血管内超音波(IVUS)で測定する。副次評価項目は、正常化全プラーク体積(TAV)の変化率と、プラークの減少のパーセンテージである。安全性や忍容性も評価した。
結果
968例(平均年齢59.8±9.2歳、女性269例、平均LDLコレステロール92.5±27.2mg/dl)のうち、846例がフォローアップ時にIVUSが行われた。プラセボと比較しエボロクマブ群では平均LDLコレステロールが低かった(93.0vs36.6mg/dl、difference:−56.5mg/dl、95%CI:-59.7to-53.4)。有効性主要評価項目であるPAVは、プラセボ群では0.05%増加し、エボロクマブ群では0.95%減少した。副次評価項目であるTAVは、プラセボ群で0.9mm3の減少、エボロクマブ群で5.8mm3の減少であった(difference:-4.9mm3, 95%CI:-7.3to-2.5)。エボロクマブはプラセボと比較し、大きくプラークを減少させた(PAVとしては、64.3%vs47.3%、difference;17.0%, 95%CI:10.4%-23.6%;TAVとしては、61.5%vs48.9%, difference17.0%, 95%CI:5.9%-19.2%)。
結論
スタチンを内服して、冠動脈造影で狭窄病変が確認された患者に、エボロクマブを加えることで、プラセボと比較し76週時点でのPAVを大きく減少した。PCSK9阻害薬の効果を評価するためには、さらなる研究が必要である。
◇この論文のPICOはなにか
P:スタチンを内服しており、冠動脈造影で狭窄病変が確認された患者
I:月に1回、エボロクマブ420mg皮下注
C:月に1回、プラセボ皮下注
O:PAV変化率
inclusion criteria:18歳以上、冠動脈造影にて20%以上の狭窄がありIVUSが施行できる病変、スタチンの容量が4週間安定しておりLDLコレステロール80mg/dl以上、スタチンの容量が4週間安定しておりLDLコレステロール60−80mg/dlで冠動脈リスクを有する患者
exclusion criteria:コントロール不良の糖尿病・高血圧・心不全・腎不全・肝疾患
◇baselineは同等か
群間差にはついて記載がない。60歳ぐらいで、男性が70%、ほぼ白人。BMI29とかなり太めで、高血圧やもともと冠動脈疾患を持っている人が多い。60%が高容量のスタチンを内服しており、低容量は1%未満。動脈硬化疾患を有している人を対象にしているだけあって、抗血小板薬が90%半ばと高く、β遮断薬やACE阻害薬/ARBも3/4の人が内服している。
◇結果
地域:北米、欧州、南米、アジア、オーストラリア、北アフリカ
登録期間:2013年3月3日〜2015年1月12日
観察期間:78週
無作為化:interactive voice response systemを用いる。置換ブロック法。
盲検化:二重盲検、アウトカム評価者も盲検化されている
必要症例数:950例(PAV変化率の差が0.71%、power90%、αlevel0.05、25%の治療中止と仮定)
症例数:968例(エボロクマブ群484例、プラセボ群486例)
追跡率:エボロクマブ群87.3%、プラセボ群87.0%
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Amgen社)
LDLは90台から30台に低下。HDLも少し上昇する。糖尿病の明らかな悪化はなさそう。
PAVが少しでも減少したのは、エボロクマブ群で67%、プラセボ群で47%だった。
◇批判的吟味
・これだけLDLコレステロールが低下したら、どちらに割り付けられたかわかるだろうな。
・仮に盲検化できてなくても、客観性の高いエンドポイントなので影響はなさそう。
・プラークの退縮が心筋梗塞のサロゲートマーカになるのか。
・壊死性プラークが退縮していれば、心筋梗塞は減りそう。
・PAV1%未満の変化が、臨床的にどれほどのインパクトがあるのかわからない。
・筋肉痛、肝障害、新規の糖尿病の発症などの有害事象は変わらないらしいが、サンプルサイズが小さいので評価できない。
◇感想
冠動脈に狭窄があり、スタチンを内服している患者にPCSK9阻害薬を追加すると、冠動脈のプラークは退縮する。
筋肉痛などの副作用でスタチンが内服できない人は少ないけどいるし、スタチンを飲んでLDLが下がっていても心筋梗塞を繰り返す人もいる。そういう人に使う価値はあると思うので、これがどれだけ臨床的なアウトカムを改善させるかとか、有害事象のデータとか、期待して待ちたい。