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PPIによる顕微鏡的大腸炎の頻度

抗血小板薬や抗凝固薬でPPIを併用することは多いですが、たまに下痢をする方がいます。

PPIの中でもランソプラゾールで多い印象を持っていましたが、先日も2件立て続けに、長引く下痢→ランソプラゾール中止→軽快ということがありました。

PPIの中でランソプラゾールを処方することが多いからランソプラゾールにそういう印象を持っているだけかもしれませんし、PPI中止後によくなったのも時系列的にたまたまそうなっただけで因果関係はわかりません。

ランソプラゾールの添付文書では、下痢は頻度不明ということになっています。

調べてみると、PPIは顕微鏡的大腸炎を起こすようです。

顕微鏡的大腸炎には膠原性大腸炎とリンパ球性大腸炎があって、いずれもPPIの中止だけで良いようです。

PPIと顕教的大腸炎(膠原性大腸炎+リンパ球性大腸炎)との関連をみたメタ解析では、発生率は膠原性大腸炎が4.14(2.89-5.40)/10万人年、リンパ球性大腸炎4.85(3.45-6.25)/10万人年でした1)

これは内視鏡をやって診断がついたものなので、有症状でも内視鏡をしなかった例もたぶん相当数あると思われます。10万人年で数例っていうと臨床医として体感できる数値ではないので、今まで自分が経験した下痢の方が顕微鏡的大腸炎だったとしたらもうちょっと多いように思います。

別の症例対照研究では、PPIの使用のオッズ比は、膠原性大腸炎で6.98(6.45-7.55)、リンパ球性大腸炎で3.95(3.60-4.33)で、PPIの中でランソプラゾールが、膠原性大腸炎で15.74(14.12-17.55)、リンパ球性大腸炎で6.87(6.00-7.86)と最も関連が強かったようです2)

PPI(特にランソプラゾール)を内服していて、慢性的な下痢を起こす患者さんでは鑑別にあげて、中止するなり変更するなりしたいと思います。

ちなみに、NSAIDsでも顕微鏡的大腸炎は起こるようで、覚えておきたいと思います。

1)Am J Gastroenterol. 2015 Feb;110(2):265-76
2)Aliment Pharmacol Ther . 2018 Sep;48(6):618-625