Prevalence and Outcomes of Anemia and Hematinic Deficiencies in Patients With Chronic Heart Failure.
JAMA Cardiol. 2016 Aug 1;1(5):539-47.
背景
慢性心不全の患者で、貧血と鉄欠乏の頻度・関連・影響などの詳細な情報は不足している。
目的
心不全が疑われ循環器内科を紹介された患者で、貧血と鉄欠乏の疫学を調査すること。
デザイン、セッティング、患者
20001年1月1日から2010年12月31日までに心不全が疑われ紹介された患者の、ヘモグロビン(Hb)、血清鉄、鉄結合率、フェリチンの情報を収集した。フォローアップデータは2011年12月13日に検閲した。心エコー、NT-proBNPは最大10年間フォローした。
アウトカム
貧血と鉄欠乏の頻度、それらの関連、死亡率、心血管死亡率
結果
4456例が研究に組み入れられた。年齢の中央値は73歳で、2696例(60.5%)は男性、1791例(40.2%)で左室収縮障害を認めた。左室収縮障害がない患者では、1172例(26.3%)でNT-proBNPが400pg/ml以上、841例(18.9%)で400pg/ml未満、652例(14.6%)は測定されていなかった。1237例(27.8%)で貧血を認め、心不全のクライテリアを満たす患者で多かった(987例、33.3%)。鉄欠乏は、貧血のある患者では270例(43.2%)から425例(68.0%)で認め、貧血のない患者では260例(14.7%)から624例(35.3%)で認めた。多変量解析では、より低いHb(HR0.92、95%CI0.89−0.95)とより低い血清鉄(HR0.98、95%CI0.97−0.99)は、より高い死亡率・心血管死亡率と独立した関連があった。
結論
心不全患者では貧血はありふれたもので、しばしば鉄欠乏と関連していた。貧血と鉄欠乏の両方が全死亡・心血管死と関連しており、心不全患者では治療のターゲットになるかもしれない。
◇この論文のPECOは?
P:慢性心不全
E/C:貧血、鉄欠乏
O:死亡
◇デザイン、対象、観察期間
・英国
・後ろ向きコホート研究
・ロジスティック回帰(貧血と鉄欠乏の変数を特定するため)、COX比例ハザードモデル(全死亡、心血管死の変数を特定するため)
・4456例
・観察期間:7.7年(中央値)
・貧血の定義(WHO) 男性:<13.0g/dl、女性:<12.0g/dl
◇結果
・心不全のある患者では、貧血を合併している頻度が高い。
・男性の場合、貧血と年齢は相関がある。
◇感想
慢性炎症によりフェリチンは高値になる傾向。フェリチン値で鉄欠乏の有無を判断していると、鉄欠乏を見逃すこともある。血清鉄やTSATの方が、鉄欠乏を反映している。
心不全患者でHbが低下する機序は複雑である。体液貯留による希釈、赤血球容積の低下、ACE阻害薬やカルベジロールの使用、鉄やエリスロポエチンの不足などがあげられる。貧血と鉄欠乏が死亡と相関するからと言って、内服薬によって鉄を補えばいいというものではない。