Effect of probiotics on the incidence of ventilator-associated pneumonia in critically ill patients: a randomized controlled multicenter trial.
Intensive Care Med. 2016 Jun;42(6):1018-28.
目的
プロバイオティクスの人工呼吸器関連肺炎(VAP)に対する予防的効果を評価すること。
方法
オープンラベル、無作為化比較対照、多施設共同試験を行った。人工呼吸器管理が48時間以上必要と予想される重症の成人患者235例を組み入れた。患者は以下の2群に無作為にわりつけ、最大で14日間継続する。1)Bacillus subtilis(枯草菌)とEnterococcus faecalis(腸球菌)0.5g含んだカプセル(Medilac-S)を1日3回、NGチューブから投与し、かつVAPの標準的予防策をとる。2)VAPの標準的予防策のみ。VAPの評価は毎日行い、咽頭ぬぐい液と胃液の培養はbaseline時に加え、1−2回/週行う。
結果
細菌学的なVAPの発症は、プロバイオティクス群で有意に低かった(36.4%vs50.4%, P=0.031)。VAP発症までの時間の平均値は、プロバイオティクス群で有意に長かった(10.4日vs7.5日、P=0.022)。胃内の病原性微生物のコロニゼーションは、プロバイオティクス群で有意に低かった(24%vs44%、P=0.004)。しかし、病原性微生物の咽頭・胃内へのコロニゼーションを認めなかった患者の割合は、両群で差はなかった。臨床的なVAPの発症率、抗生剤使用量、人工呼吸器装着期間、死亡率、在院日数のプロバイオティクスによる改善はなかった。
結論
B.Subtilis, E.faecalisを含んだプロバイオティクスは、VAP予防と胃内の病原微生物のコロニゼーションの予防に効果的であり、安全な方法である。
◇この論文のPICOはなにか
P:48時間以上、人工呼吸器管理が必要と予想される患者
I:VAPの標準的予防策+プロバイオティクス
C:VAPの標準的予防策のみ
O:細菌学的に診断されたVAPと、咽頭と胃内の病原微生物の根絶及びコロニゼーションの割合
inclusion criteria:ICU入室24時間以内、ICUでの気管内挿管、
exclusion criteria:18歳未満、81歳以上、APACHEⅡスコア≧25、72時間以上の人工呼吸器管理、経腸栄養を行えない、免疫不全(悪性腫瘍、AIDS、HIVキャリア)、妊婦、授乳婦
◇結果
地域:中国
登録期間:2010年3月〜2015年4月
観察期間:抜管まで
無作為化:記載なし
盲検化:記載なし
必要症例数:234例(対照群のVAPの発生が60%、20%のリスク減少、power80%、αlevel5%、脱落10%として算出)
症例数:250例
追跡率:945(235/250例)
解析:mITT解析
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臨床的なVAPはprimary endpointに含まれていないが、プロバイオティクス群で少ない傾向。細菌学的なVAPが少なくなれば、臨床的なVAPが減るのも納得できる。
咽頭では、プロバイオティクスによるコロニゼーションの変化はないが、胃内のコロニゼーションはプロバイオティクスで有意に低下している。
◇批判的吟味・感想
・安価な方法。
・Bacillus subtilisとEnterococcus faecalisのカプセルを投与するみたいだけど、日本だとビオフェルミン散がそれにあたる。ただ、カプセルは4℃で保存って書いてあるから、なんか普通のものと違いそう。
・大きなデメリットもなさそうなので、プロバイオティクスをルーチンに使用してもいいだろう。