虚血性心疾患

FOURIER試験二次解析 LDLコレステロール値と心血管イベント

Clinical efficacy and safety of achieving very low LDL-cholesterol concentrations with the PCSK9 inhibitor evolocumab: a prespecified secondary analysis of the FOURIER trial.
Lancet. 2017 Aug 25. pii: S0140-6736(17)32290-0. doi: 10.1016/S0140-6736(17)32290-0. [Epub ahead of print]

◇PECO
P:家族性高コレステロール血症
E/C:治療開始4週後のLDLコレステロール値
O:心血管死、心筋梗塞、脳梗塞、冠動脈血行再建、不安定狭心症

<デザイン、セッティング>
・FOURIER試験のprespecified secondary analysis
・25982例(27564例のうち、4週時点のLDLを測定していない症例、4週以内にprimary ednpointの発生を除外)
・観察期間:2.2年(IQR:1.8−2.5年)

4週後のLDLコレステロール値で5つのグループに分ける
・<0.5 mmol/L
・0.5−1.3 mmol/L
・1.3-1.8 mmol/L
・1.8−2.6 mmol/L
・>2.6 mmol/L
(LDLコレステロール1mmol/L=38.67mg/dl)

<結果>
▶︎4週間後のLDLコレステロール値
エボロクマブ群:0.8mmol/L(IQR:0.5−1.2)
プラセボ群:2.2mmol/L(IQR:1.9−2.7)

各グループで、LDLコレステロールの中央値の推移は、4週以降横ばい。

▶︎心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、脳梗塞、冠動脈血行再建、不安定狭心症)
>2.6mmol/Lと比較すると各グループのハザード比は
・<0.5 mmol/L:0.76(95%CI:0.64-0.90)
・0.5−1.3 mmol/L:0.85(95%CI:0.76-0.96)
・1.3-1.8 mmol/L:0.94(95%CI:0.82-1.09)
・1.8−2.6 mmol/L:0.97(95%CI:0.86-1.09)

▶︎有害事象
AST/ALT上昇、Cr上昇、神経認知機能イベント、新規の糖尿病の発症、悪性腫瘍、出血性脳卒中、非心血管死など評価。どれも1−2%の発生率で、いずれのグループでも差はなかったが、唯一、白内障に関連した有害事象は、<0.5 mmol/Lのグループでオッズ比:1.54(1.03−2.31)と有意に高かった。

◇まとめと感想
FOURIER試験の二次解析で、到達したLDLコレステロール値と心血管イベントの関連は比例関係にあり、到達したLDLコレステロール値が低いほど、心血管イベントは低かった。ただし、LDLコレステロール値が1.3−1.8mmol/Lと1.8-2.6mmol/Lのグループでは、>2.6mmol/Lのグループよりハザード比は低いものの、統計学的には有意ではなかった。

エボロクマブを使っても、LDLコレステロールが思いの外下がらない方はいるので、その場合には費用対効果を考え、中止するという選択もありかもしれない。

JUPITER試験では、ロスバスタチンを投与しLDLコレステロール値<30mg/dlに低下した症例では神経認知機能の有害事象が有意に多かったが(HR:1.10、95%CI:1.01−1.21)、FOURIER試験ではLDLコレステロール値と神経認知機能の有害事象に関連はなかった。