虚血性心疾患

FFRグレーゾーンの予後は良好

Seven-year clinical outcomes of patients with moderate coronary artery stenosis after deferral of revascularization based on gray-zone fractional flow reserve.
Cardiovasc Interv Ther. 2015 Jul;30(3):209-15

《要約》
FFR:0.75-0.80はグレーゾーンとして認知されている。現在、FFR:0.80は血行再建のカットオフとして用いられているが、冠動脈中等度狭窄(FFR:0.75−0.80)の長期の臨床転帰は不明である。FFRにより血行再建を延期した連続120症例をグループⅠ(FFR:0.75−0.80)とグループⅡ(FFR0.80−0.85)に分類し、それぞれ55例、65例を割り付けた。全死亡、心臓死、心筋梗塞、血行再建(FFR使用の有無)、うっ血性心不全、胸部症状による入院について、冠動脈造影後7年間フォローアップを行った。event-free ratesはグループⅠで73%、グループⅡで63%で(P=0.35)、FFRを測定した冠動脈に関連したevent-free ratesは94%と85%であった(P=0.08)。フォローアップ期間を通して、スタチンの内服率はグループⅡで著しく低かった(P=0.008)。FFRがグレーゾーンの患者の7年間の臨床転帰は良かった。なお、FFRを測定した冠動脈に関連したイベントはグレーゾーンの患者群で低く、FFRや冠動脈狭窄の程度に関わらず、至適薬物療法が必要とされる。

◯論文のPICOはなにか
P:冠動脈造影にて75%(51−75%)の狭窄を有する患者
I/C:FFR:0.75−0.80、FFR:0.80−0.85の2群に分け
O:全死亡、心臓死、心筋梗塞、血行再建(FFR使用の有無)、うっ血性心不全、胸部症状による入院の複合エンドポイントについて評価

exclusion criteria:急性冠症候群、重症弁膜症、透析患者、気管支喘息、アスピリン・パパベリン・アデノシンに対する禁忌

◯予後、病因、危険因子、害、予測ルールのいずれをみる研究か
予後をみる研究である。

◯追跡期間はどれくらいか
7年間と心血管イベントを評価するには十分な期間と考えられる。

◯結果に影響を及ぼすほどの脱落があるか
すべての患者が解析に含まれている。

◯outcomeの観察者が危険因子についてmaskingされているか
記載なし

◯交絡因子の調整が行なわれているか
characteristics
年齢、糖尿病の割合、喫煙者、LVEF、標的血管などに統計学的な差はなかったが、内服薬のうちスタチンで有意な群間差があった。

交絡因子の調整は行われていない。

◯結果
result
(tableはすべて本文より引用)

◯感想/批判的吟味
FFR:0.75−0.80がグレーゾーンとして捉えられているのは、おそらくFAME試験でFFR:0.80をカットオフとしたことに由来するではないか。虚血出現の閾値は、FFR:0.75と考えられており、FFR≧0.75の予後は良いとされる。それと合致する結果であった。