疫学

総エネルギー量に占める炭水化物の割合と全死亡の増加

Associations of fats and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality in 18 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study.
Lancet. 2017 Aug 28. doi: 10.1016/S0140-6736(17)32252-3. [Epub ahead of print]

◇この論文のPECOは?
P:35−70歳
E/C:炭水化物、脂肪、蛋白質の摂取割合
O:死亡と心血管イベント(心血管疾患死、心筋梗塞、脳梗塞、心不全)

食事内容は食事摂取頻度調査票(FFQ)を用いて調査。その他、社会経済的要因(教育、収入、雇用)、ライフスタイル(喫煙、飲酒、身体活動)、既往歴、内服薬、身長、体重、腹囲、血圧なども調査。

調査は3,6,9年後に繰り返し行う。

<デザイン、セッティング>
・前向き観察研究
・135335例 
・5大陸18ヶ国(高所得国:カナダ・スウェーデン・アメリカ、中所得国:アルゼンチン・ブラジル・チリ・中国・カンボジア・イラン・マレーシア・パレスチナ・ポーランド・南アフリカ・トルコ、低所得国:バングラディシュ・インド・パキスタン・ジンバブエ)
・登録期間:2003年1月1日〜2013年5月31日
・観察期間:7.4年(中央値、IQR5.3-9.3年)
・multivariable Cox frailty model

<結果>
平均年齢50歳ぐらいで、男性40%。


(本文から引用)

炭水化物の摂取割合が大きいと、死亡率も高くなる。それは、非心血管死の増加であり、心血管疾患・心筋梗塞・脳梗塞との関連は見出せず、心血管疾患死も増加しない。


(本文から引用)

飽和脂肪酸の摂取量の増加は、脳梗塞の減少と関連があるが、心筋梗塞との関連はない。一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸の摂取量も、心筋梗塞・脳梗塞・心血管疾患死との関連なし。

◇まとめと感想
飽和脂肪酸はLDLコレステロールを増加させ、それを多価あるいは一価不飽和脂肪酸に置き換えることはLDLコレステロールを減少させる。飽和脂肪酸を含む脂肪の摂取を抑え、多価あるいは一価不飽和脂肪酸へ置き換えることで心血管疾患と全死亡の減少が報告されている。

そのため、AHAのガイドラインでは乳製品や肉から摂取する飽和脂肪酸を、植物油(主にリノール酸)から摂取する多価不飽和脂肪酸へ置き換えることを推奨している(1)。

この疫学研究では、総エネルギーのうち炭水化物の割合が増えると全死亡が増加したが、脂肪、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸と心血管疾患や死亡との関連は明らかではなかった。

(1)Circulation. 2017;136:e1-e23