Long-term benefit of early pre-reperfusion metoprolol administration in patients with acute myocardial infarction: results from the METOCARD-CNIC trial (Effect of Metoprolol in Cardioprotection During an Acute Myocardial Infarction).
J Am Coll Cardiol. 2014 Jun 10;63(22):2356-62.
目標
この試験の目的は、再灌流前のメトプロロール静注が、左室駆出率(LVEF)と臨床的イベントに与える長期的な効果を検証することである。
背景
primary PCIと早期のメトプロロール静注が、STEMIの梗塞サイズを減少させることは報告した。
方法
METOCARD−CNIC試験では、発症6時間以内でKillip≦Ⅱの前壁のSTEMI270例を、再灌流前にメトプロロールを静注する群と対照群に無作為化した。202例に対し6ヶ月後にMRIを施行した。少なくとも12ヶ月は臨床的なフォローアップを行った。
結果
6ヶ月後のMRIでは、LVEFは有意にメトプロロール群で高かった(48.7±9.9% vs 45.0%±11.7%、adjusted treatment effect:3.49%, 95%CI:0.44-6.55%)。LVEF≦35%に低下した症例はメトプロロール群で有意に少なかった(11% vs 27%, P=0.006)。ICDがclassⅠで適応になった症例はメトプロロール群で有意に少なかった(7% vs 20%, P=0.012)。フォローアップ2年間(中央値)で、死亡・心不全入院・再梗塞・悪性不整脈の複合エンドポイントは、メトプロロール群10.8%、対照群18.3%であった(HR:0.55、95%CI:0.26−1.04)。心不全入院はメトプロロール群で有意に少なかった(HR:0.32、95%CI:0.015−0.95)。
結論
primary PCIを行ったKillip≦Ⅱの前壁のSTEMIでは、再灌流前にメトプロロールを静注することで、LVEFは高くし、左室収縮不全とICD適応を減らし、心不全入院を減らす。
◯この論文のPICOはなにか
P:Killip分類ⅠまたはⅡの前璧のSTEMI
I:再灌流前にメトプロロールの静注を行う(メトプロロール静注群)
C:メトプロロールの静注を行わない(対照群)
O:梗塞サイズ(発症5−7日にMRIで測定)
inclusion criteria:18−80歳、30分以上症状が持続するSTEMI(V1−V5の2誘導以上で、2mm以上のST上昇)、6時間以内に再灌流できると予想される症例、発症から無作為化まで4.5時間以内
exclusion criteria:Killip分類ⅢまたはⅣ、収縮期血圧<120mmHgが持続、PR間隔>240msec、HR<60bpmが持続、β遮断薬がすでに投与されている症例
手順
メトプロロール5mgを2分間かけて3回静注する。無作為化は院外のemergency medical servicesか7つの参加施設で行う。禁忌がない限り、すべての症例で発症24時間以内にメトプロロールの経口投与を行う。
◯baselineは同等か
もともとのbaselineは同等。ただ、6ヶ月後のフォローアップMRIを行った220例についてのcharacteristicsに関しては不明。
◯結果
地域:スペイン
登録期間:2010年11月〜2012年10月
観察期間:2年間(中央値)
無作為化:発症からの時間(<1.5h、≧1.5h)、DM、性別、年齢(<60歳、≧60歳)で層別化し、ブロック法にて無作為化を行う。
盲検化:single-blind
必要症例数:275例(梗塞サイズ20%減少、power90%、αlevel0.05として220例を算出し、MRIを施行しない症例が約20%と仮定している)
症例数:270例(メトプロロール静注群131例、対照群139例)
追跡率:202/270例(74.8%)
解析:
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1週間後にMRIを施行した220例は、6ヶ月に再度MRIを施行した。220例のうち9例は梗塞所見がなく、9例は拒否・死亡・移住などを理由にフォローアップのMRIを行わなかった。
心保護薬の使用は、両群で差はなかった様。
◯感想/批判的吟味
無作為化された270例のうち202例のフォローアップで、追跡率は約75%。決して高いとはいえず、バイアスが入り込む余地あり。
6ヶ月後のLVEFの差は、3.49%,(95%CI:0.44-6.55%)と統計学的には有意だが、臨床的に意味がある数値なのか悩ましい。
2年間のフォローアップで、臨床的なエンドポイントにもう少しで有意差がつきそう。とっても、その内訳をみると心不全による入院でソフトエンドポイントである。single-blindなので、その効果を過大評価する可能性がある。
このMETOCARD−CNIC試験もそうだが、再灌流障害を抑制するために様々な試みがなされているが、CKのAUCやMRIで測定する梗塞サイズで統計学的有意差がついても、臨床的なエンドポイントを改善させることは難しい。