Effect of early metoprolol on infarct size in ST-segment-elevation myocardial infarction patients undergoing primary percutaneous coronary intervention: the Effect of Metoprolol in Cardioprotection During an Acute Myocardial Infarction (METOCARD-CNIC) trial.
Circulation. 2013 Oct 1;128(14):1495-503.
背景
primary PCIの際のβ遮断薬が、梗塞サイズに与える効果は定かではない。メトプロロールを再灌流前に静注することで梗塞サイズが縮小すると仮説を立てた。
方法・結果
Killip分類ⅠまたはⅡの前璧のST上昇型心筋梗塞(STEMI)で発症6時間以内にprimary PCIを行う症例を、再灌流前にメトプロロールを静注する群(139例)と静注を行わない群(131例)に無作為化した。禁忌でない症例すべてに、24時間以内にメトプロロールを経口投与した。事前に定められた主要評価項目は梗塞サイズで、発症5−7日目にMRIで評価した。MRIは220例(81%)で施行した。梗塞サイズはメトプロロール静注群で小さかった(25.6±15.3g vs 32.0±22.2g、adjusted difference:-.6.52、95%CI:−11.39to-1.78)。PCI前のTIMIgradeが0または1の症例は、梗塞サイズのadjusted differenceは−8.13(95%CI:−13.10to-3.16、P=0.0024)であった。CKのピーク値とAUCから推測した梗塞サイズは、メトプロロール静注群で有意に減少した。左室駆出率(EF)はメトプロロール静注群で有意に高かった(adjusted difference:2.67%、95%CI:0.09−5.21)。死亡、悪性心室性不整脈、心原性ショック、房室ブロック、24時間以内の再梗塞は、メトプロロール静注群7.1%、対照群12.3%であった(P=0.21)。
結論
primary PCIを行ったKillip分類ⅠまたはⅡの前璧のSTEMIにおいて、再灌流前早期のメトプロロール静注は24時間以内の有事事象を増やさずに、梗塞サイズを縮小させ、EFを増加させる。
◯この論文のPICOはなにか
P:Killip分類ⅠまたはⅡの前璧のSTEMI
I:再灌流前にメトプロロールの静注を行う(メトプロロール静注群)
C:メトプロロールの静注を行わない(対照群)
O:梗塞サイズ(発症5−7日にMRIで測定)
inclusion criteria:18−80歳、30分以上症状が持続するSTEMI(V1−V5の2誘導以上で、2mm以上のST上昇)、6時間以内に再灌流できると予想される症例、発症から無作為化まで4.5時間以内
exclusion criteria:Killip分類ⅢまたはⅣ、収縮期血圧<120mmHgが持続、PR間隔>240msec、HR<60bpmが持続、β遮断薬がすでに投与されている症例
手順
メトプロロール5mgを2分間かけて3回静注する。無作為化は院外のemergency medical servicesか7つの参加施設で行う。禁忌がない限り、すべての症例で発症24時間以内にメトプロロールの経口投与を行う。
◯baselineは同等か
baselineでは両群間に差はない。
MRIを施行例の両群間の差は不明だが、LAD近位部病変、PCI成功例は対照群で多く、少しbaisが入りそう。
◯結果
地域:スペイン
登録期間:2010年11月〜2012年10月
観察期間:発症5−7日後にMRI施行
無作為化:発症からの時間(<1.5h、≧1.5h)、DM、性別、年齢(<60歳、≧60歳)で層別化し、ブロック法にて無作為化を行う。
盲検化:single-blind
必要症例数:275例(梗塞サイズ20%減少、power90%、αlevel0.05として220例を算出し、MRIを施行しない症例が約20%と仮定している)
症例数:270例(メトプロロール静注群131例、対照群139例)
追跡率:220例(81%)
解析:ITT解析と記載されているが、同意の撤回・プロトコール違反・MRI未施行例などを除外しており、modified ITTと思われる。いや、MRIを撮っていない例を除外しており、per protcol解析なのか??
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メトプロロール静注群 vs 対照群
peakCK:2397±214IU/L vs 3176±254IU/L(adjusted difference-740, 95%CI-1361to-120)
CK(AUC):49427±4013IU/L vs 62953±4634IU/L(adjusted difference−12825to−24346)
◯感想/批判的吟味
MRIを使用することにより、梗塞サイズを正確に計測できるが、施行できない例がある程度でてしまう。もともと、MRIを施行しない症例を20%と仮定して試験が行なわれているが、それが妥当なのか、結果にどの程度影響を及ぼすのかはわからない。CKのAUCの方が、より簡便で脱落が少ない分、正確な評価になるのかもしれない。ただ、それもsurrogate endpointではあるが。