虚血性心疾患

TINSAL-CVD試験 サルサレートの非石灰化プラーク減少効果示せず

Effect of Targeting Inflammation With SalsalateThe TINSAL-CVD Randomized Clinical Trial on Progression of Coronary Plaque in Overweight and Obese Patients Using Statins
JAMA Cardiol. Published online May 25, 2016

《要約》
重要性
炎症が、肥満や糖尿病、心血管疾患の病理学的関連の要因になるかもしれない。

目標
炎症をターゲットにしたサルサレートの使用は、プラセボに比べ冠動脈非石灰化プラークの進展を抑えられるか検証する。

デザイン、セッティング、参加者
TISAL−CVD試験は2008年9月23日〜2012年7月5日の間に、ガイドラインに準じた標準的治療に加え、30ヶ月にわたりサルサレート、またはプラセボを内服する群に無作為に割り付けた。無作為化はコンピュータによる中央割り付けで、患者、治療介入者、研究者は盲検化されている。患者は安定した冠動脈疾患が確認された肥満であり、スタチンを使用している。

介入
30ヶ月にわたり、サルサレート3.5g/日、またはプラセボを経口投与すること。

主要評価項目
主要評価項目は、CTで計測された冠動脈非石灰化プラークの進展である。

結果
257例を、サルサレート群に129例、プラセボ群に128例無作為に割り付けた。平均年齢は60.8歳、94.0%が男性であった。190例(サルサレート群89例、プラセボ群101例)は試験を完了した。プラセボ群で、冠動脈非石灰化プラークの増加はなく、プラーク量の変化も両郡間で差はなかった(平均差異−1mm3、95%CI:−11 to 9mm3)。サルサレート群で白血球、リンパ球、単球、好中球が減少し、CRPに変化なくアディポネクチンが増加した。空腹時の血糖、中性脂肪、尿酸、ビリルビンはサルサレート群で減少し、ヘモグロビンは増加した。尿アルブミンは増加し、耳鳴りや心房不整脈はサルサレート群で多くみられた。

結論
冠動脈疾患患者に、スタチンを含めた標準的治療にサルサレートを加えることは、冠動脈非石灰化プラークの進展抑制にはつながらない。

◯この論文のPICOはなにか
P:スタチンを内服している肥満の冠動脈疾患患者
I:サルサレート3.5g/日の内服(サルサレート群)
C:プラセボの内服(プラセボ群)
O:非石灰化プラークの変化量

inclusion criteria:冠動脈疾患を有すること(陳旧性心筋梗塞、冠動脈バイパス術やPCIの既往、画像検査による冠動脈疾患の証明)、運動負荷検査異常、21歳から75歳、BMI27以上、BMI35未満(女性)、BMI40未満(男性)、Ccr≧60ml/min/1.73m2、MDCTAで1つ以上の病変が証明されていること

◯baselineは同等か
同等。スタチンは両郡とも約99%で内服している。内服薬にも群間差はないらしいが、ピオグリタゾンやエゼチミブなど冠動脈プラークを退縮させる薬剤に関しては記載がない。
characteristics

◯結果
地域:米国
登録期間:2008年9月23日〜2012年7月5日
観察期間:30ヶ月
無作為化:DMの有無で層別化し、ブロック法を用いて無作為化を行っている
盲検化:二重盲検
必要症例数:一患者あたり平均1.7病変があり、両郡間で4%のプラーク容積の差が生じ、ドロップアウトが20%と仮定し、power80%、αlevel0.05とし、必要症例数は278例と算出。
症例数:257例(一患者あたり3.8病変あったため、257例登録された時点で登録を中止)
追跡率:30ヶ月後のMDCTAを行い解析できたのは、サルサレート群で84/129例、プラセボ群で89/128例であった。
解析:modified ITT解析
スポンサー:NHLBI。サルサレートやプラセボは企業からの提供。

result

◯感想/批判的吟味
ドロップアウトは想定より多かったが、サルサレート群でもプラセボ群でも、非石灰化プラークに変化なし。サンプルザイズが小さくて済むので、clinical endpointではなくプラーク変化量をendpointとしたと思うが、そもそも非石灰化プラークが減少すれば心筋梗塞も減ると考えていいのだろうか。

こういう昔からある薬で心血管イベントが減れば、医療経済的にもいいのだが。