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治療抵抗性VT/VFの院外心停止 アミオダロンやリドカインの有効性は示せず

Amiodarone, Lidocaine, or Placebo in Out-of-Hospital Cardiac Arrest.
N Engl J Med. 2016 May 5;374(18):1711-22

《要約》
背景
抗不整脈薬は、ショック抵抗性の心室細動(VF)や脈なし心室頻拍(pulseless VT)を伴った院外心停止に対して用いられるが、生存利益は証明されていない。

方法
無作為化二重盲検試験で、アミオダロン、リドカイン、生理食塩水(生食)を比較した。対象は成人の院外心停止で、非外傷性のショック抵抗性VF、またはpulselessVT(少なくともショックを1回行った後)である。北米10施設の救急救命士が患者の登録を行う。主要評価項目は退院までの生存率、副次評価項目は退院時の良好な神経学的機能である。参加条件を満たし、試験で用いられる薬剤が使用され、初期波形がVFもしくはショック抵抗性のpulseless VTであった者を、per-protocol populationとする。

結果
per−protocol populationでは、アミオダロンに974例、リドカインに993例、プラセボに1059例の計3026例が登録され、退院時生存率はそれぞれ24.4%、23.7%、21.0%であった。生存率の相違は、アミオダロンとプラセボでは3.2ポイント(95%CI:−0.4 to 7.0)、リドカインとプラセボでは2.6ポイント(95%CI:−1.0 to 6.3)、アミオダロンとリドカインでは0.7ポイント(95%CI:−3.2 to 4.7)であった。退院時の神経学的アウトカムは三群で似通っていた。目撃者(witness)のある心停止で薬剤の効果が異なり、居合わせた人による心肺蘇生(bystander)とwitnessのある心停止では、アミオダロンとリドカインの生存率は有意に高かった。アミオダロン投与群では、他の群より一時的な心臓ペーシングが必要となる者がより多かった。

結論
全体では、ショック抵抗性のVFやpulseless VTの院外心停止では、アミオダロンもリドカインも生存率や退院時の神経学的アウトカムを改善しなかった。

◯この論文のPICOはなにか
P:非外傷性の院外心停止でショック抵抗性のVF及びpulseless VT
I:アミオダロン、もしくはリドカインの投与
C:生食の投与
O:退院時の生存率

inclusion criteria:18歳以上、一回以上のショックでも持続するVFもしくはpulseless VT、再発性のVFもしくはpulseless VT
exclusion criteria:すでにオープンラベルでアミオダロンもしくはリドカインが投与された症例、アミオダロンとリドカインに対するアレルギーの既往

◯baselineは同等か
同等。witnessがあったのは、どの群も70%程度。bystanderによるPADショックは5−6%で、救急要請から救急隊現着まで5−6分と、日本と大きな差はないように思います。
characteristics1
characteristics2

◯結果
地域:米国
登録期間:2012年5月7日〜2015年10月25日
観察期間:心肺停止から退院まで
無作為化:施設で層別化され、ブロック法を用いて行われる
盲検化:患者、EMS、治療介入者は盲検化されている(使用される薬剤のキットも同一ものになっている)。
必要症例数:退院時生存率をアミオダロン群で29.7%、プラセボ群で23.4%と仮定。power90%、αlevel0.05として、必要症例数は3000例と算出されている。
症例数:3026例(アミオダロン群974例、リドカイン群993例、プラセボ群1059例)
追跡率:ITT populationから1/3がexcludeされた残りがper−protocol populationでうち99%が、解析されている(ITT populationからどのような理由でexcludeされ、per-protocol populationとしたかは知りたいところだが、Supplementary Appendix参照しろということで、詳細不明)。
解析:per−protocol解析(primary analysis)
スポンサー:the National Heart,Lung,and Blood Instituteなど。企業の関与はない。

result
witnessとbaystanderのある集団のサブグループ解析では、生存率は、アミオダロン群27.7%、リドカイン群27.8%、プラセボ群22.7%であった。全体的リスク差はアミオダロンとプラセボで5.0ポイント(95%CI:0.3−9.7)、リドカインとプラセボで5.2ポイント(95%CI:0.5−9.9)であった。

◯感想/批判的吟味
per−protocol解析でprimary outcomeに差なし。もちろんITTでも差はなかった。つまり、全体としてはアミオダロンやリドカインの投与は、生存率や神経学的予後に寄与しないということになる。

しかし、witnessとbaystanderのある集団を対象としたサブグループ解析では、アミオダロン群とリドカイン群で精鋭予後改善効果が認められる。promary outocomeに差がないので、サブグループ解析の結果をそのまま信頼してはいけないと思うが、ただ、witnessやbystanderがない症例で生命予後や神経学的予後が悪いのは、実感としてわかる話。

アミオダロンはROSCや入院時生存率を改善するデータはあるが、退院時生存率まで改善する効果があるかわかっておらず、この試験によりその可能性があることが示された。今後、witnessやbystanderがある症例を対象とし、同様の仮説が成り立つかどうか検証が待たれる。