Rate Control versus Rhythm Control for Atrial Fibrillation after Cardiac Surgery.
N Engl J Med. 2016 May 19;374(20):1911-1921
背景
心臓手術後の心房細動は、死亡率や合併症の増加、入院期間の延長と関連がある。血行動態が安定した術後心房細動において、最善の初期治療戦略はレートコントールかリズムコントロールか議論が分かれる。
方法
新規発症の術後心房細動の患者を、レートコントロールとリズムコントロールに無作為に割り付けた。主要評価項目は無作為化以降の入院期間で、Wilcoxon rank-sum testによって評価した。
結果
術前に登録した2109例のうち695例(33.0%)に術後心房細動が起こった。その中で、523例が無作為化された。総入院日数はレートコントロール群とリズムコントロール群で変わらなかった(中央値はそれぞれ5.1日、5.0日、P=0.76)。死亡率、重大な有害事象(24.8/100人月 vs 26.4/100人月)、血栓塞栓症と出血イベントのいずれも有意差はなかった。両群で約25%が割り付けられた治療から逸脱した。主な原因は、レートコントロール群ではやくざいの効果不十分のため、リズムコントロール群ではアミオダロンの副作用のためである。60日後、30日にわたり心房細動のない安定した心拍リズムを維持できたのは、レートコントロール群では93.8%、リズムコントロール群では97.9%であった(P=0.02)。また、退院後から60日間、心房細動が見られなかったのは、レートコントロール群では84.2%、リズムコントロール群では86.9%であった(P=0.41)。
結論
術後心房細動のおいて、レートコントロールとリズムコントロールの治療戦略は、入院日数、合併症、心房細動の持続のいずれも同等であった。
◯この論文のPICOはなにか
P:心房細動の既往のない、血行動態の安定した心臓手術後の心房細動患者
I/C:レートコントロール、リズムコントロール
O:術後60日以内の入院日数
inclusion criteria:待機的心臓手術(冠動脈疾患、弁膜症)、心房細動が60分以上持続、術後7日以内の心房細動の再発
exclusion criteria:心房細動の既往
procedure:レートコントロール群では安静時心拍数100bpm未満を目標とする。レートコントロールで洞調律化しない場合、血行動態の改善や症状緩和に必要ならば、リズムコントロールを行う。リズムコントロール群ではアミオダロンを用い、24−48時間にわたり心房細動が持続するならカルディオバージョンを推奨する。アミオダロンは60日間継続することを推奨するが、アミオダロンに関連した有害事象(症候性徐脈、QTc>480msec、神経障害)があった場合は中止してもよい。心房細動が48時間以上持続する場合や、再発する場合はワルファリンによる抗凝固療法を開始する。
◯baselineは同等か
同等。心房細動のリスクになる高血圧や冠動脈疾患などの基礎疾患に群間差はなく、僧帽弁疾患も差はなさそう。術前の左房径についての記載はない。
◯結果
地域:米国、カナダの23施設
登録期間:2014年5月〜2015年5月
観察期間:60日間
無作為化:方法についての記載はない
盲検化:記載なし
必要症例数:入院日数6.3日、両群間の入院日数の差は2.0日、power90%、αlevel0.05として、必要症例数は520例と算出
症例数:523例(レートコントロール群262例、リズムコントロール群261例)
追跡率:100%
解析:ITT解析
スポンサー:National Institutes of Health, Canadian Institutes of Health Research。企業の関与はない。
リズムコントロール群で62/261例(23.7%)、レートコントロール群で70/262例(26.7%)のクロスオーバーあり。
◯感想/批判的吟味
・baselineの左房径についても知りたい
・どこまで盲検化されているかわからない
・クロスオーバーが多い
・必要症例数に達しているが、primary endpointで有意差がないので、レートコントロールでもリズムコントロールでも効果に差はないと言える。