Intensive vs Standard Blood Pressure Control and Cardiovascular Disease Outcomes in Adults Aged ≥75 Years: A Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2016 May 19.[Epub ahead of print]
重要性
高血圧症を有する高齢者の適切な収縮期血圧(SBP)の目標は、明らかではない。
目標
高血圧症を有するが糖尿病がない75歳以上の高齢者において、厳格降圧(<120mmHg)と標準降圧(<140mmHg)の効果を比較する。
デザイン、セッティング、参加者
SPRINT試験に参加した75歳以上の患者の多施設、無作為化試験。2010年10月20日から登録を開始し、2015年8月20日までフォローアップした。
介入
参加者をSBP<120mmHgを目標にする群(厳格降圧群、n=1317)とSBP<140mmHgを目標にする群(標準降圧群、n=1319)に無作為に割り付けた。
主要評価項目
主要評価項目は、非致死性心筋梗塞、不安定狭心症、非致死性脳梗塞、非致死性急性非代償性心不全、心血管死である。全死亡は副次評価項目である。
結果
2636例(平均年齢79.9歳、女性37.9%)のうち、2510例(95.2%)で完全にフォローアップした。フォローアップ期間の中央値は3.14年で、主要評価項目(102イベント vs 148イベント、HR0.66、95%CI:0.51−0.85)と全死亡(73例 vs 107例、HR0.67、95%CI:0.49−0.91)は有意に厳格降圧群で低かった。重大な有害事象に群間差はなかった(48.4% vs 48.3%, HR0.99, 95%CI:0.89-1.11)。低血圧の発生は厳格降圧群2.4%、標準降圧群1.4%(HR1.71、95%CI:0.97−3.09)、失神はそれぞれ3.0%と2.4%(HR1.23、95%CI:0.76−2.00)、電解質異常はそれぞれ4.0%と2.7%(HR1.51、95%CI:0.99−2.33)、急性腎障害はそれぞれ5.5%と4.0%(HR1.41、95%CI:0.98−2.04)、転倒による外傷はそれぞれ4.9%と5.5%(HR0.91、95%CI:0.65−1.29)であった。
結論
75歳以上の歩行可能な高齢者では、厳格降圧群で標準降圧群と比較し、致死性心血管イベント、非致死性心血管イベント、全死亡が有意に少なかった。
◯この論文のPICOはなにか
P:糖尿病を除く心血管リスクを有する75歳以上の高血圧患者
I:SBP<120mmHgを目標にコントロールする(厳格降圧群)
C:SBP<140mmHgを目標にコントロールする(標準降圧群)
O:非致死性心筋梗塞、不安定狭心症、非致死性脳梗塞、非致死性急性非代償性心不全、心血管死の複合エンドポイント
inclusion criteria:心血管リスク(心血管疾患の既往、CKD、フラミンガムリスクスコア≧15%、75歳以上)
exclusion criteria:2型糖尿病、脳梗塞の既往、6ヶ月以内の症候性心不全、EF<35%、認知症、生命予後3年未満、6ヶ月以内の故意でない10%以上の体重減少、SBP110mmHg未満(起立1分後)
◯baselineは同等か
frailtyとアスピリンの内服率に群間差あり。
◯結果
地域:米国
登録期間:2010年10月〜2013年3月
観察期間:3.14年(中央値)
無作為化:方法についての記載なし
盲検化:試験の性質上、患者と治療介入者は盲検化できない。outcome評価者は盲検化されている。
必要症例数:3250例(標準降圧群でのイベント率が3.25%、厳格降圧によるリスク減少が25%、2%/年のロストフォローアップ、power81.9%と仮定)
症例数:2636例(early termination for benefit)
追跡率:95.2%
解析:ITT解析
スポンサー:the National Institutes of Health。武田薬品からアジルサルタンが提供されている。
内服薬は、標準降圧群より厳格降圧群の方が1剤多かった。
(Supplemental Contentより)
◯感想/批判的吟味
糖尿病がないハイリスクの高齢者でも、厳格降圧が心血管イベントを抑制したという結果。複合エンドポイントの中で、有意に減っているのは心不全のみ。
・利尿薬、ACE阻害薬/ARB、β遮断薬の処方が多く、それが心不全を抑制した可能性がある。
・open-labelで心不全というソフトエンドポイントでの有意差(心不全の定義は、心不全による入院と静注治療を要する救急受診)
・やはり、電解質異常や腎障害は厳格降圧群で多い傾向