虚血性心疾患

ACSの完全血行再建 至適タイミング

STEMI患者の50%で、責任病変以外に狭窄があると言われている。残存狭窄に対するPCIのタイミングは、primaryPCIの際に一期的に行うか、あるいは後日待機的に行うかに分かれ、その至適タイミングについては結論がでていない。

循環動態が不安定であれば責任病変と残存狭窄を一期的にPCIを行うことはあるが、循環動態が安定している患者に関しては二期的にやる場合がほとんどだと思われる。

このメタ解析は、残存狭窄に対するPCIを一期的に行うか、あるいは待機的に行うかで、心血管イベントを比較したものである。

Optimal Timing of Complete Revascularization in Acute Coronary Syndrome: A Systematic Review and Meta-Analysis.
J Am Heart Assoc. 2017 Apr 10;6(4). pii: e005381.

◇論文のPICOはなにか
P:多枝病変を有するACS
I:primaryPCIの際に残存狭窄に対するPCIを行う(single-stage群)
C:primaryPCIとは別のタイミングで残存狭窄に対するPCIを行う(multistage群)
O:全死亡、心筋梗塞の再発、血行再建の複合エンドポイント

◇患者背景
4つのRCTが解析に組み入れられた。うち、3つのRCTで心原性ショックとLM病変が除外されている。

(本文から引用)
SMILE試験のサンプルサイズが一番大きく、全体に占める割合も大きい。


(本文から引用)
冠危険因子は両群で差はない。


(本文から引用)
使用したステントはSMILE試験は、BMSもDESも両方、他の試験ではDESを用いたり、記載がなかったり。

◇結果

(本文から引用)
6ヶ月の時点では、single-stage群もmultistage群も差はない。

これが、各試験の最長観察期間(2RCT:6ヶ月、1RCT:12ヶ月、1RCT:2.5年)のデータを統合すると、血行再建のみで有意差がつく。ハザード比0.68(95%CI:0.47−0.99)。

◇感想
多枝病変を有するACSに対し、どのタイミングで残存狭窄に対するPCIをやるかについては、6ヶ月の時点では差がないという結果。ただ、各試験の最長観察期間で解析すると、single-stage群で血行再建が有意に少なくなった。

なぜ観察期間を伸ばすと血行再建に差がつくかわからない。血行再建で差がつくなら、予定した待機的PCIの前に起こりそうなものだが。まあ、イベント数も少ないので、たぶん偶然誤差だろう。

そもそも、STEMIの残存狭窄へPCIを行うことにメリットがあるかということ自体、現時点では議論が分かれるところであり、現在進行中のCOMPLETE試験で決着がつくだろう。