Trial of everolimus-eluting stents or bypass surgery for coronary disease.
N Engl J Med. 2015 Mar 26;372(13):1204-12.
背景
PCIとCABGを比較した多くの試験が、第2世代の薬剤溶出性ステント(DES)を使用していない。
方法
西アジア27施設で、無作為化非劣性試験を行った。冠動脈多枝病変患者1776例を、PCIとCABGに無作為に割り付けることを計画した。主要評価項目は2年間の死亡、心筋梗塞、標的血管血行再建の複合エンドポイントとした。長期フォローアップでのイベント発生率も比較した。
結果
880例(PCI群438例、CABG群442例)を登録した段階で、slow enrollmentのため試験は早期中止となった。2年間で、主要評価項目はPCI群で11.0%、CABG群で7.9%であった(絶対リスク差3.1%、95%CI:-0.8to6.9%、P=0.32 for noninferiority)。長期フォローアップで(中央値4.6年)、主要評価項目はPCI群で15.3%、CABG群で10.6%であった(HR:1.47、95%CI:1.01−2.13)。死亡、心筋梗塞、脳梗塞に差はなかったが、再血行再建と自然発生の心筋梗塞は有意にPCI群で多かった。
結論
冠動脈多枝病変患者の中で、エベロリムス溶出性ステントでPCIをされた患者では、CABGが行われた患者より心血管イベントの発生が多かった。
◯この論文のPICOはなにか
P:冠動脈多枝病変
I:エベロリムス溶出性ステント(EES)を使用しPCIを行う(PCI群)
C:CABGを行う(CABG群)
O:死亡、心筋梗塞、標的血管血行再建の複合エンドポイント
inclusion criteria:18歳以上、冠動脈造影検査にて2枝以上に70%以上の狭窄
exclusion criteria:左冠動脈主幹部病変
◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢64歳、男性70%、BMI25、DM40%、安定狭心症45%、不安定狭心症45%、90日以内の心筋梗塞10%、EF59%、3/4が3枝病変で1/4が2枝病変、CTO30%、Syntax24(平均)、syntax≧33:15%
◯結果
地域:韓国、中国、マレーシア、タイ
登録期間:2008年7月〜2013年9月
観察期間:2年(予定)、4.6年(中央値)
無作為化:ブロック化、層別化され、interactive Web-response systemを用いて無作為化が行なわれている。
盲検化:open-label
必要症例数:1776例(CABG群で2年間で主要評価項目の発生が12%、非劣性マージン4%、power80%で計算)
症例数:880例(早期中止)
追跡率:99.7%
解析:ITT解析
スポンサー:Abbott Vascularの資金提供あり(解析には関与なし)。
割り付け通りに治療されたのは、PCI群では94.3%、CABG群では86.4%であった。PCI群では平均3.4本のステントを使用され、IVUS使用率は71.8%であった。CABG群では64.3%にoff−pump CABGが行われ、99.3%がLADにバイパスされている。完全血行再建率はPCI群50.9%、CABG群71.5%であった。
◯感想/批判的吟味
・必要症例数に達せず、早期に試験中止。
・PCI群で完全血行再建が50%と少ない。
・off−pump CABGが60%(これが高いか低いかは判断できないし、日本でも同様の傾向があると思うが、off−pump CABGではグラフト開存率は低くなる)。
・退院時の内服の内服率は、抗血小板薬、β遮断薬、ACE阻害薬、ARBなどPCI群で有意に高い(Supplementrary Appendixに記載)。
このBEST試験では、EESを用いたPCIはCABGと比較し、primary ednpointで有意差がつき、その中で死亡の増加は有意ではなかったものの、再血行試験と自然発生の心筋梗塞が多いという結果であった。
必要症例数に達せず試験が早期に中止になったこと、完全血行再建が低率などいろいろあるかもしれないが、PCIがCABGと異なり自然発生の心筋梗塞を抑えられないのは確かなことで、それにより心筋梗塞、ひいては死亡というエンドポイントが増えてしまう可能性がある。
生体吸収性スキャフォールド(BVS)によってneoathroscrelosisや超遅発性ステント血栓症(VLST)が抑えられる可能性はあるが、自然発生のMIを抑制できない点では金属製ステントと同様であろう。そして、現在のBVSは複雑性病変に対してはEESに対し成績は劣るため、Syntaxスコアが高い複雑性病変では不利だろう。兎に角、複雑な多枝病変ではCABGが第一選択という状況は、しばらく変わりそうにない。