TRITON=TIMI38試験では、クロピドグレルよりプラスグレルの方が血栓イベントを抑えれていたが、プラスグレル群で出血が有意に多かった。それは、年齢が75歳以上、体重60kg以下で顕著であった。
日本人は世界的にみると、出血をしやすいということが言われており、エフィエントはLD20mg、MD3.75mgと日本独自の規格になっている(LD:loading dose, MD:maintain dose)。プラビックスを若干上回る抗血小板作用を狙ってこの容量になった様。
エフィエントとプラビックスを比較したPRASFIT−ACS試験、PRASFIT−Elective試験でも、もちろん出血イベントについて検討されている。
生命に関わるような、あるいはHbの著しい低下を引き起こすような出血では群間差はないが、穿刺部出血のようなより軽微な出血は有意に増加している。重大な出血の頻度はそんなに高くないので、これぐらいの症例数(約1400例)ではpowerが小さいと思われる。たとえば、minor TIMI bleedingはプラスグレル群3.9%、クロピドグレル群2.2%(HR1.10, 95%CI 0.94-3.31)と統計学的有意差はついていないものの、プラスグレル群で多く見られており、もう少し症例数を増やせば統計学的有意差がついてもおかしくない。
もちろん、症例数を増やせば増やすほど統計学的有意差はつくのは当たり前だが、PRASFIT−ACSでのminor TIMI bleedingの発生率をみると、臨床的にも意味のある差になるのではないだろうか。また、minor TIMI bleedingはHb3−5g/dl程度低下するような出血なので、わずかな差であってもその臨床的な意味合いも大きいだろう。
待機的PCIを対象にしたPRASFIT−Elective試験は、血栓性イベント・出血性イベントについてエフィントとプラビックの群間差を求めるような統計学的解析がなされていない。なので、出血に関してはPCI関連出血以外はプラビックス群で多かったが、これが統計学的に有意なのかどうかはわからない。
ちなみに、抗血小板薬のloadingはPCIの6−96時間以内に行われている。
多くの抗血栓薬でもその傾向があるが、エフィエントでも高齢(75歳以上)、低体重(50kg以下)で、そうでない場合に比べて著しく出血リスクは増す。3)
1)Circ J. 2014;78:1684−92
2)Circ J. 2014;78:2926−34
3)Circ J. 2015 Aug 25;79:1928−37