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チェーンストークス呼吸 / 中枢性無呼吸を伴う慢性心不全 ASV(オートセットCS)は予後を悪化させる SERVE-HF試験

慢性心不全は、チェーンストークス呼吸(CSR:Cheyne-Stokes Respiration)、中枢性睡眠時無呼吸(CSA:central sleep apnea)を合併すると、その予後は悪くなることが知られている。

CHF CSA 予後
“J Am Coll Cardiol 2007;49:2028より引用”

CSR−CSAを伴う慢性心不全に対するCPAPを効果を検証したCANPAP試験では、平均2年の観察期間で死亡または心臓移植率の改善はなかったが、AHI(Apnea Hypopnea Index)の改善やLVEF(左室駆出率)の改善が認めれている。そして、CPAP導入3ヶ月後にAHIが15未満に改善した群(CPAP responder)では、予後の改善が認めれている。

CPAP redponder
”Circulation2007;115:3173より引用”

ASV(商品名:オートセットCS)はbilevel PAPをより患者の呼吸に同期しやすくしたものであるが、それによって生命予後が改善するか検証したのが、以下の試験である。

Adaptive Servo-Ventilation for Central Sleep Apnea in Systolic Heart Failure
N Engl J Med. 2015;373:1095-105

◯この論文のPICOはなにか
P:LVEF<45%の慢性心不全で、AHIが15以上
I:通常治療に加え、ASV導入(ASV群)
C:通常治療(通常治療群)
O:全死亡、心疾患への救命的介入(心移植、心室補助装置の導入、心停止からの蘇生、ICD植え込み患者の心室生不整脈からの蘇生)、心不全増悪による入院

inclusion criteria:22歳以上の有症候性慢性心不全、LVEF<45%、NYHAⅢ/ⅣもしくはNYHAⅡで24ヶ月以内に心不全により入院していること、安定していること、ガイドラインに基づいた心不全治療がなされていること、AHI≧15

Intervention:ASVの設定はデフォルトで呼気気道内圧5cmH2O(最小3cmH2O、最大10cmH2O)、呼気気道内圧は閉塞生睡眠時無呼吸がなくなるよう調整される。夜間5時間以上、週7日間装着することが推奨される。

◯ランダム化されているか
the study design has been reported previouslyとあり、”randomized”と描かれているが、その方法までは本文には記載なし。

◯baselineは同等か
抗不整脈薬がASV群で多いこと以外、群間差はない。
以下、ざっくりとcharacteristicsを示すと、年齢69歳、男性9割、BMI28、NYHAⅢ70%、LVEF32%、虚血性7割、β遮断薬とACE阻害薬/ARBは90%で内服、利尿薬は85%で内服、抗不整脈薬は通常治療群13%、ASV群19%とASV群で有意に多いが詳細は不明、AHI31。
ICD/CRT、心電図所見(CLBBB、AFなど)、6分間歩行距離なども同等。

◯症例数は十分か
αlevel5%、power80%、ASV群で20%のリスク減少があると仮定し、651イベント必要であった。しかし、登録が進まずイベントの発生率も予想より低かったため、2度必要症例数の変更を行っている。最終的に、60ヶ月間で1193例の登録が予定され、それに加え2年間のフォローアップ期間の延長を要した。
ASV群666例、通常治療群659例、計1325例が登録された。

◯盲検化されているか
患者、治療介入者は盲検化できない。outcome評価者が盲検化されているかどうかは本文には記載がない。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
ITT解析。

◯結果
ASVを1日3時間以上使用できたのは60%。
ASV群で、AHIは6.6に改善。
しかし、全死亡と心血管死がASV群で有意に増えるという結果であった。

(ASV群 vs 通常治療群の順で記載、単位はNo. of Events/Yr)
Primary endpoint:0.245 vs 0.212, Hazard ratio:1.13(95%CI:0.97-1.31)
全死亡:0.119 vs 0.093, Hazard ratio:1.28(95%CI:1.06-1.55)
心血管死:0.102 vs 0.076, Hazard ratio1.34:(95%CI:1.09-1.65)
心不全増悪による入院:0.190 vs 0.164, Hazard ratio:1.13(95%CI:0.95-1.33)

◯批判的吟味/感想
・ResMed社がスポンサーであり、データ解析にも加わっている
・ASV導入により全死亡と心血管死が増加している。
・CSR−CSAを伴う慢性心不全は予後が悪いが、ASVによりCRS−CSAを改善しても予後は悪くなるだけ。