抗血栓療法

ダビガトランとリバーロキサバンの消化管出血リスク

Comparative risk of gastrointestinal bleeding with dabigatran, rivaroxaban, and warfarin: population based cohort study.
BMJ. 2015 Apr 24;350:h1857

《要約》
目的
新規経口抗凝固薬リバーロキサバンとダビガトランの実臨床での消化管出血のリスクを検証すること。

デザイン
後ろ向き、プロペンシティをマッチさせたコホート研究

参加者
2010年12月1日〜2013年9月30日に新規にダビガトラン、リバーロキサバン、ワルファリンの内服を開始した患者。

主要評価項目
全消化管出血、上部・下部消化管出血の発生率を推定するため、プロペンシティスコアをマッチさせたCox比例ハザードモデルを用いた。異質性についはmarginal effects modelを用いて検討した。

結果
心房細動患者では、ダビガトランの消化管出血の発生率は2.29%/年(95%CI:1.88−2.79)、ワルファリンでは2.87%/年(95%CI:2.41−3.41)であった。非心房細動患者では、ダビガトランの消化管出血は4.10%/年(95%CI:2.47−6.80)、ワルファリンでは3.71%/年(95%CI:2.16−6.40)であった。リバーロキサバンでは、心房細動患者の消化管出血は2.84%/年(95%CI:2.16−6.40)であった(ワルファリン:3.06%/年[2.49−3.77])。非心房細動患者では1.66%/年(95%CI:1.23−2.24)であった(ワルファリン:1.57[1.25−1.99])。プロペンシティスコアを用いた解析では、心房細動患者の消化管出血はNOACとワルファリンでは同程度であった(ダビガトランvsワルファリン:HR0.79[0.61−1.03]、リバーロキサバンvsワルファリン:HR0.93[0.69−1.25])。また非心房細動患者でも同様であった(ダビガトランvsワルファリン:HR1.14[0.54−2.39]、リバーロキサバンvsワルファリン:HR0.89[0.60−1.32])。65歳以上では消化管出血のリスクは増加し、76歳以上になると心房細動患者ではダビガトランの消化管出血はワルファリンのそれを超える(HR:2.46[1.61−3.83])。また、リバーロキサバンでも心房細動の有無を問わずワルファリンに比べ消化管出血が増加する(心房細動:HR2.91[1.65−4.81]、非心房細動:HR4.58[2.40−8.72])。

結論
NOACに関連した消化管出血のリスクは、ワルファリンと同程度であった。高齢者、特に75歳以上の患者でNOACを処方する際は注意すべきである。

◯論文のPECOはなにか
P:ダビガトラン、リバーロキサバン、ワルファリンを内服している患者
E/C:なし
O:消化管出血

inclusion criteria:18歳以上、2010年12月1日〜2013年9月30日に初めてダビガトラン・リバーロキサバン・ワルファリンが処方された患者
exclusion criteria:アピキサバン内服例(サンプルサイズが小さいため)、機械弁、僧帽弁狭窄症、血液透析、腹膜透析、腎移植、ナーシングホームなどへの入所

◯結果
デザイン:後ろ向きコホート研究
登録期間:2010年12月1日〜2013年9月30日
地域:米国
症例数:92816例(プロペンシティスコアがマッチしたのは、ダビガトランvsワルファリンでは心房細動で7749例、非心房細動で732例、リバーロキサバンvsワルファリンでは心房細動で5166例、非心房細動で10803例)
outcome観察者のmasking:影響なし
交絡因子の調整:プロペンシティスコア
スポンサー:企業の関与なし

result
(本文より引用)

◯感想/批判的吟味
米国のデータベースからの後ろ向きデータ。COIなし。

75歳以上の恒例でなければ、ダビガトランもリバーロキサバンもワルファリンと消化管出血のリスクは同程度。非心房細動の高齢者ではcomparableとされているが、サンプルサイズが小さくさが出にくいのかもしれない。とにかく、心房細動の有無によらず75歳以上の高齢者に対しNOACを使用する場合は、注意が必要。