Early aggressive versus initially conservative treatment in elderly patients with non-ST-segment elevation acute coronary syndrome: a randomized controlled trial.
JACC Cardiovasc Interv. 2012 Sep;5(9):906-16
目標
高齢者の非ST上昇型急性冠症候群(NSTEACS)に対する早期積極的アプローチのリスクとベネフィットを検証すること。
背景
高齢者を対象に、NSTEACSの治療戦略を比較した臨床試験はほとんどない。
方法
発症48時間以内の75歳以上のNSTEACS313例(平均82歳)を早期積極的治療戦略(72時間以内に冠動脈造影を行い、適応があれば血行再建を行う)と保存的治療戦略(再発性虚血のみ冠動脈造影と血行再建を行う)に無作為に割り付けた。主要評価項目は、死亡、心筋梗塞、脳梗塞、心血管イベントや重大な出血のため繰り返す入院の複合エンドポイントである。
結果
早期積極的治療戦略(EA)群の88%が冠動脈造影検査を行い(55%が血行再建を行った)、保存的治療(IC)群では29%が冠動脈造影検査を行った(23%が血行再建を行った)。主要評価項目は、EA群では43例(27.9%)に、IC群では55例(34.6%)に認められた(HR:0.80, 95%CI:0.53−1.19)。死亡率(HR:0.87, 95%CI:0.49-1.56)、心筋梗塞(HR:0.67, 95%CI:0.33-1.36)、繰り返す入院(HR:0.81, 95%CI:0.45-1.46)に群間差はなかった。入院時にトロポニンの上昇を認めた症例では、早期積極的治療戦略により主要評価項目が減少した。
結論
この試験では、高齢者のNSTEACSに対する早期積極的治療戦略のベネフィットについて、明確な結論は出なかった。入院時にトロポニンが上昇している症例に対する治療効果は、大規模な試験で確かめられるべきである。
◯この論文のPICOはなにか
P:75歳以上の非ST上昇急性冠症候群
I:早期積極的治療戦略(early aggressive:EA群)
C:保存的治療(initially conservative:IC群)
O:死亡、心筋梗塞、脳梗塞、心血管イベントや重大な出血のため繰り返す入院の複合エンドポイント
inclusion criteria:安静時胸痛出現後48時間以内、心電図変化と/またはトロポインかCK−MBの上昇
exclusion criteria:二次性の心筋虚血、心不全、30日以内のPCI/CABG・脳血管イベント、Cr>2.5mg/dl、最近の輸血、6週間以内の消化管出血・血尿、血小板<9万/μl、抗凝固療法、重症閉塞性肺疾患、悪性腫瘍
早期積極的治療戦略
72時間以内に冠動脈造影検査(CAG)を行い、冠動脈病変・患者の希望・術者の技量に応じてPCIもしくはCABGを行う。
保存的治療戦略
薬物療法を行う。難治性虚血、心筋梗塞、虚血による心不全、悪性心室性不整脈を認めた場合にはCAGを行う。
◯結果
地域:イタリア
登録期間:2008年1月〜2010年3月
観察期間:12ヶ月
無作為化:コンピュータによる割り付け
盲検化:試験の性質上、盲検化できない
必要症例数:504例(6ヶ月時点での主要評価項目がIC群で30%、EA群で20%、power80%、αlevel0.05)としていたが、予想よりも症例登録が遅かったため、12ヶ月時点でIC群40%、EA群25%に修正し、必要症例数を313例と算出した。
症例数:313例(EA群:154例、IC群:159例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし
EA群で136例(88.3%)、IC群で46例(28.9%)にCAGが行われた。
EA群で85例(55%、PCI76例、CABG9例)、IC群で37例(23%、PCI36例、CABG1例)
◯感想/批判的吟味
・After Eighty試験が行われる前の高齢者のNSTEACSを対象にした唯一のRCT。
・心電図変化、トロポニン上昇がいずれも60%ぐらいで、両方とも認めるのは40%ほどで、NSTEMIでない症例も結構含まれてそう。
・IC群の1/4でCAG・PCIがやらている。EA群でCAGが行われたのは90%弱で、かつ血行再建まで行われたの約半分。高齢者のNSTEACSに血行再建を行うことの有用性を検証するには、クロスオーバーが多いように思う(もちろん、そこにはクロスオーバーしてしまう理由はあるのだが)。
・必要症例数に達せず、パワー不足である。