Association of Frailty and 1-Year Postoperative Mortality Following Major Elective Noncardiac Surgery: A Population-Based Cohort Study.
JAMA Surg. 2016 Jan 20. [Epub ahead of print]
重要性
単施設研究でフレイルティは術後30日以内の死亡率のリスク因子であると確認された。フレイルティの術後死亡率への、長期間あるいは集団レベルの影響については明らかではない。
目標
術後1年以内の死亡率に対する、フレイルティの影響とその関連を測定すること。
デザイン・セッティング・参加者
オンタリオ(カナダ)の後ろ向き、集団ベースのコホート研究である。2002年4月1日から2012年3月31日までのデータを収集した。2014年12月から2015年3月に解析を行った。対象は、待機的な非心臓手術の大手術を行った65歳以上の地域住民である。
暴露
the Johns Hopkins Adjusted Clinical Group(ACG) frailty-defining diagnoses indicatorによって定義されたフレイルティ。
主要評価項目
手術後1年以内の死亡率。
結果
202811例のうち6289例(3.1%)がフレイルであった(平均年齢77±7歳)。術後1年以内にフレイル群では13.6%が、ノンフレイル群では4.8%が死亡した。社会人口統計学的交絡因子と外科的な交絡因子の調整後は、ハザード比2.23(95%CI:2.08−2.40)であった。フレイルティは術後3日の死亡率を増加させた(HR35.58, 95%CI:29.78-40.19)。フレイルティと死亡リスクの関連は、高齢になると薄まる(60歳=HR:2.66, 95%CI:2.28-3.10, 90歳=HR:1.63、95%CI:1.36−1.95)。フレイル群では死亡率は外科手術の種類によって異なり、関節形成術で最も死亡リスクが高かった(股関節置換術=HR:3.79、95%CI:3.21−4.47、膝関節置換術=HR2.68、95%CI:2.10−3.42)。
結論
集団レベルでは、術前のフレイルティは手術後1年以内の死亡率と関連していた。特に、術後早期、若年、関節形成術で顕著であった。
◯論文のPECOはなにか
P:65歳以上の待機的非心臓手術
E:フレイルな患者(フレイル群)
C:フレイルでない患者(ノンフレイル群)
O:術後1年以内の死亡率
inclusion criteria:以下の手術(頸動脈内膜剥離術、末梢動脈バイパス術、股関節置換術、膝関節置換術、大腸手術、肝部分切除、膵十二指腸切除、胃切除術、食道切除術、腎摘出術、膀胱摘出術)
フレイルティの定義
(The Johns Hopkins ACG® System Technical Reference Guide version9.0より引用)
フレイルティの診断のゴールドスタンダードはないらしく、よく用いられるのはVulnerable Elderly Survey(VES)というものらしい。このACG frailty-defining diagnoses indicatorはVESスコアとよく相関するらしい。
◯結果
デザイン:後ろ向きコホート研究
登録期間:2002年4月1日〜2012年3月31日
フォローアップ期間:術後1年間
地域:カナダ、オンタリオ
症例数:6289例
交絡因子の調整:Cox比例ハザードモデル
術後1年以内の死亡率 adjusted HR:2.23(95%CI:2.08−2.40)
◯感想/批判的吟味
フレイルであれば、術後の死亡率が高くなるのは感覚的にわかる。ただ、フレイルという様々な社会的・身体的・精神敵な要因が絡んだものと死亡率との関連をみたもので、かつ後ろ向きでもあるので、交絡因子の調整はかなり難しいのではないかと思う。
フレイルティの診断基準が明確ではないが、Friedらの診断基準がよく用いられている。それは以下の5つのうち、3つ以上を満たす場合、フレイルと診断される。①体重減少(過去1年間に予期しない4.5kg以上の体重減少)、②主観的疲労感、③日常生活活動量の減少、④身体能力(歩行速度)の減弱、⑤筋力(握力)の低下
体重減少はよいが、ほかの項目をチェックするのは煩雑で、実臨床での応用には難しいように思う。