虚血性心疾患

EXAMINATION試験(5年間の長期成績)のCOMMENT

Long-term EXAMINATION of drug-eluting stents in acute myocardial infarction
Lancet.2016;387:316–318

無作為化試験、メタ解析、ガイドラインなどでは、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)に薬剤溶出性ステント(DES)を使用することを支持している。第2世代DESは、第1世代に比べストラットは薄く、生体適合性が増し、耐久性あるいは生分解性ポリマーは薄くなった。安定狭心症では、第2世代DESはベアメタルステント(BMS)より有効で安全であることが、臨床試験の長期成績で示されているが、遅発性ステント血栓症や超遅発性ステント血栓症の問題があるSTEMIでは第2世代の長期成績は乏しい。

EXAMINATION試験の1年でのデータでは、エベロリムス溶出性ステント(EES)はBMSと比較し、primary endpoint(死亡、心筋梗塞、再血行再建の複合エンドポイント)を減少させなかった。対照群でイベント発生数が少なかったためにパワー不足であった。3年で有意差がつき、5年でもEESの使用は支持された。

late-catch-up現象が抑えられたため、標的病変再血行再建(TLR)は12ヶ月以降もEESで少なかった。それとは対照的に、1年時には有意に抑制されていたステント血栓症が、5年時には有意差が消失していた。

EXAMINATION試験では、EES群で心筋梗塞の再発が多かったが(3.7%vs 1.8%, P=0.04)、死亡は少なかった(5.5% vs 8.8%, P=0.01)。心筋梗塞の再発は非責任血管によるものであり、したがってデバイスによるものではなかった。死亡率が低下したメカニズムはわからない。研究者は早期のステント血栓症が左室機能低下を招いたことを挙げているが、心臓死は両群間で差はなく(3.3% vs 4.9%, P=0.11)、全死亡の減少は非心臓死に起因していた(1.9% vs 3.8%, P=0.03)。

非心臓死の解析では、悪性腫瘍関連死と敗血症関連死がBMS群で多かった。試験開始時の無症候性悪性腫瘍の偏りが与える影響は、以前の大規模臨床試験(DAPT試験)で報告されている。

統計学的パワー、非心臓死を現象させたメカニズムが不明であること、ステント血栓症や再血行再建は最初の1年で減少したものの心筋梗塞は5年間で増えていることなどから、EXAMINATION試験の長期成績を鵜呑みにすることはできない。

◯感想
EXAMINATION試験の5年間のフォローアップでは、死亡率が抑えられ、それは非心臓死によるものであるが、そのメカニズムは不明。DAPT試験がそうだったように、すでにbaselineで無症候性悪性腫瘍の群間の偏りがあった可能性があるし、おそらくそのような偶然の差ではないかと思う。

EXAMINATION試験では明らかではなかった部分があるようだが、第2世代DESでもlate catch upやLVSTの問題は解決していない。