Thoracoscopic stand-alone left atrial appendectomy for thromboembolism prevention in nonvalvular atrial fibrillation.
J Am Coll Cardiol. 2013 Jul 9;62(2):103-7
目標
胸腔鏡的左心耳切除術は非弁膜症性心房細動の血栓塞栓症予防に有効か評価する。
背景
左心耳の閉鎖は、抗凝固薬による血栓塞栓症予防に変わる有効な選択肢である。
方法
血栓塞栓症の既往がある30例(平均年齢74±5.0歳)が選択された。21例は早急に手術が必要だった(平均年齢75歳、平均CHA2DS2−VAScスコア4.5)。うち13例は出血の副作用のためワルファリンが使用できず、7例はINRがコントロール不良であり、1例は癌治療のためワルファリンを減量した後にTIAを発症した。左心耳は内視鏡的なカッターで切除した。
結果
内視鏡的左心耳切除術は周術期の死亡や大きな合併症はなかった(手術時間32分、小開胸への移行が2例)。同意が得られた場合には、手術3ヶ月後の3D造影CTで左心耳切除の仕上がりを評価した。フォローアップ期間は1−38ヶ月(平均16±9.7ヶ月)で、1例が乳癌のため28ヶ月後に死亡した。抗凝固療法を中断したにもかかわらず、血栓塞栓症の再発はなかった。
結論
胸腔鏡的左心耳切除術は安全である可能性があり、完全な左心耳切除も比較的簡便である。非弁膜症性心房細動の血栓塞栓症予防の現実的な選択肢になりえるかどうかは、さらなる検証が必要である。
◯論文のPICOはなにか
P:脳梗塞既往のある非弁膜症性心房細動
I:胸腔鏡的左心耳切除術
C:なし
O:脳梗塞
◯結果
・男性14例、女性16例
・平均年齢74±5.0歳
・23例が心房細動歴10年以上
・7例に複数回の脳梗塞歴
・脳梗塞から3ヶ月以内に手術を受けたサブグループは21例
・そのサブグループは、平均CHADS2スコア3.5、平均CHA2DS2−VAScスコア4.5
・平均手術時間32分、小開胸への移行2例
・26例は術中のTEEにて完全に左心耳への血流が消失したことを確認できた
・創部の小さな合併症が透析患者で1例あった
・周術期の死亡や大きな合併症はなかった
・19例で手術3ヶ月後に3D造影CTを施行
・フォローアップ期間は平均16±9.7ヶ月で、脳梗塞の再発はゼロ。
◯感想/批判的吟味
平均CHADS2スコア/CHA2DS2−VAScスコアから判断するに、1−2例は脳梗塞を発症してもおかしくはないが、16±9.7ヶ月の間では脳梗塞はゼロであった。また周術期の大きな合併症もなかった様。もう少し症例数が多くなるか、あるいは観察期間が長くないと判断はできないかもしれないが、なんらかの理由で抗凝固療法が施行できない患者には、非常に有効な選択肢になりえる。