不整脈

OMEGA試験 心臓突然死に対するω−3脂肪酸の効果

OMEGA, a randomized, placebo-controlled trial to test the effect of highly purified omega-3 fatty acids on top of modern guideline-adjusted therapy after myocardial infarction.
Circulation. 2010 Nov 23;122(21):2152-9

《要約》
背景
急性心筋梗塞に対する現在のガイドラインに基づいた治療に、ω-3脂肪酸を加える事の予後的効果を検証した無作為化二重盲検試験はない。

方法・結果
OMEGA試験は、ω3アシドエチルエステル90(1g/日、1年間)が急性心筋梗塞患者の心臓突然死を抑制するか検証した、無作為化、プラセボ対照、二重盲検、多施設共同試験である。副次評価項目は全死亡率と非致死的臨床的イベントである。2003年10月から2007年6月の間で、ドイツ国内の108施設で、急性心筋梗塞発症3−14日後の患者3851例(平均年齢64歳、女性25.6%)を無作為化した。緊急冠動脈造影検査が93.8%に、PCIが77.8%に施行された。365日のフォローアップ期間で、心臓突然死1.5% vs 1.5%(P=0.84), 全死亡率4.6% vs 3.7%(P=0.18), 脳血管・心血管イベントは10.4% vs 8.8%(P=0.1), 血行再建27.6% vs 29.1%(P=0.34%)という結果であった(オメガ群 vs 対照群)。

結論
ガイドラインに基づいた急性心筋梗塞治療により、心臓突然死の発生率は低く、それにω−3脂肪酸を加える事での効果は見出せなかった

◯この論文のPICOはなにか
P:急性心筋梗塞発症早期の患者
I:ガイドラインに基づいた治療に加え、ω−3アシドエチルエステル90(EPA:460mg、DHA380mg含有)を内服する(オメガ群)
C:ガイドラインに基づいた治療のみ(対照群)
O:1年間の心臓突然死

inclusion criteria:18歳以上、STEMI、non-STEMI(ローリスクの患者が多く登録され予想よりイベント発生率が低かったため、2005年4月からは、以下の基準のひとつ以上を満たす者を登録した。再灌流療法を行っていない患者、LVEF<40%、糖尿病、70歳以上)

定義
心臓突然死:胸部症状出現から1時間以内の死亡、就寝中の死亡、再灌流療法成功後の入院3週間以内の死亡

◯ランダム化されているか
ブロックランダム化が行なわれている。

◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢64再、3/4が男性、責任病変(LMT0.9%、LAD38%、LCx19%、RCA33%)、50%以上の狭窄(LMT3%、LAD63%、LCx45%、RCA56%)、LVEF<45%:24%、糖尿病27%、Cr>2mg/dl:2%、β遮断薬94%、AEC阻害薬/ARB90%、スタチン94%、利尿薬36%、インスリン10%。

◯症例数は十分か
対照群での1年間の死亡率が3.5%、ω−3アシドエチルエステル90により45%のリスク減少があるとαlevel2.5%(1sided)、βerror20%として、必要症例数は各群1900例と算出され、オメガ群に1940例、対照群に1911例が割り付けられている。

◯盲検化されているか
double blind trial。outcome評価者も盲検化されている。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
同意の撤回、ロストフォローアップを除いたmodified ITT解析が行なわれている。追跡率98.8%。

◯結果
result
(本文より引用)

◯感想/批判的吟味
GISSI-Prevenzione試験では、虚血イベントはn−3PUFA投与の有無で群間差はなかったが、突然死が有意にn−3PUFAを投与した群で少なかった。それはn−3PUFAの抗不整脈作用によるものと考察されていた。ただ、GISSI-Prevenzione試験では抗血小板薬・スタチン・β遮断薬・ACE阻害薬の内服率が非常に悪く、現在の至適薬物療法とかけ離れている印象があった。GISSI-Prevenzione試験での薬剤の投与量は、n−3PUFA:1g/日、VitE:400mg/日の容量で、OMEGA試験とn-3脂肪酸の投与量はあまり変わらない。つまり、GISSI-Prevenzione試験では認められていた突然死の予防効果が、至適薬物療法を行うことで打ち消されたと言っていいかもしれない。

ただ、このOMEGA試験でサンプルサイズが小さかったためにprimary endpointに有意差がつかなかったという可能性がある。心臓突然死が対照群で3.5%と仮定されているのはあまりにも高いと思うし、実際1.5%と予想よりも低く、それを前提に必要症例数を算出すると20000例以上になる様。そこまでサンプルを増やせば異なる結果になっていた可能性はある。

あと、日本の現状とは少し異なり、primaryPCIが行なわれたのは80%弱と少ないように思う。これは心室性不整脈が増える方向に働くため、primaryPCIが高頻度で行われる日本では、ω−3脂肪酸の抗不整脈作用がより出にくいのではないか。