心不全

GISSI-HF試験 n−3PUFAの予後改善効果

Effect of n-3 polyunsaturated fatty acids in patients with chronic heart failure (the GISSI-HF trial): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial.
Lancet. 2008 Oct 4;372(9645):1223-30

《要約》
背景
いくつかの疫学的実験的試験では、n-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)がアテローム血栓性冠動脈疾患や不整脈に対し良い効果を与える事が示されている。n−3PUFAが症候性心不全患者の罹病率や死亡率を改善する事ができるか検証した。

方法
イタリア国内31施設で、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験を行った。原因やLVEFにかかわらず、NYHAⅡ-Ⅲの慢性心不全患者をn−3PUFA1g/日投与群(N=3439)とプラセボ投与群(N=3481)に無作為に割り付けた。割り付けは隠匿化され、コンピュータ化された電話無作為化システムによって行なわれた。患者は中央値3.9年までフォローアップされた。主要評価項目は全死亡、全死亡と心血管イベントによる入院である。ITT解析を行った。

結果
無作為化したすべての患者を解析した。n−3PUFA群で955例(27%)、プラセボ群で1014例(29%)が死亡した(adjusted HR:0.92[95%CI:0.849−0.998])。死亡に対するNNTは56、死亡と心血管イベントによる入院に対するNNTは44であった。両群で、胃腸障害が最も高頻度の有害事象であった(n−3PUFA群96例[3%]、プラセボ群92例[3%])。

結論
n-3脂肪酸による簡便で安全な治療が、慢性心不全の全死亡や心血管イベントによる入院をわずかに抑える。

◯この論文のPICOはなにか
P:NYHAⅡ−Ⅲの慢性心不全
I:n−3PUFA850−882mg(EPA:DHA=1:1.2)の投与(n−3PUFA群)
C:プラセボの投与(プラセボ群)
O:死亡、死亡と心血管イベントによる入院のco-primary endpoint

inclusion criteria:18歳以上、LVEF>40%なら過去に心不全の入院歴があること
exclusion criteria:n−3PUFAに対する禁忌、悪性腫瘍などの併存疾患、ランダム化1ヶ月以内の治験薬の投与、ACS、1ヶ月以内の血行再建、ランダム化後3ヶ月以内に予定された心臓手術、重大な肝疾患、妊婦、授乳婦、妊娠する可能性がある女性

◯ランダム化されているか
隠匿化されたcomputed telephone randomization systemによってランダム化を行う。

◯baselineは同等か
どこに統計学的な群間差があるかわからない。表にも本文にも記載がない。
characteristics

◯症例数は十分か
3年間のフォローアップで、プラセボ群で25%の死亡率であり、n−3PUFAにより3.75%の絶対リスク低下があると仮定。αlevel0.045、power90%として、サンプルサイズが算出されているが、いくつかは記載がない。

◯盲検化されているか
double blind。outcome評価者も盲検化されている。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
不適切なインフォームドコンセントなどのため71/7046例が除外されている。

◯結果
フォローアップ期間3.9年(中央値)。
n−3PUFA群で1004例(29%)、プラセボ群で1029例(30%)で割り付けられた治療を中断していた。
result
(table,figureはすべて本文から引用)

◯感想/批判的吟味
無作為化比較試験なのに群間差があり、Cox比例ハザードモデルを用いて多変量解析が行なわれている。これはコホート研究ではないか。