心不全

NEAT−HFpEF試験 一硝酸イソソルビドはHFpEFの運動能を改善しない

Isosorbide Mononitrate in Heart Failure with Preserved Ejection Fraction.
N Engl J Med. 2015 Dec 10;373(24):2314-24.

《要約》
背景
硝酸薬は左室駆出率の保持された心不全(HFpEF)患者の運動耐用能を改善させるために処方されている。HFpEF患者の日常生活の活動性に対するイソソルビドの効果を検証した。

方法
多施設、二重盲検、クロスオーバー試験で、HFpEF110例をイソソルビドとプラセボにむさいくに割り付けた。イソソルビドは6週間で漸増させる(30mg分1から60mg分1、120mg分1まで)。その後、別の群にクロスオーバーさせる。主要評価項目は日常生活活動レベル(患者が装着した加速度計で加速度単位を測定)、副次評価項目は1日あたりの活動時間、QOLスコア、6分間歩行、NT−proBNP値である。

結果
イソソルビド120mgを内服した群では、プラセボと比較し日常生活活動性が低い傾向がみられ(−381加速度単位、95%CI:−780to17)、1日あたりの活動時間が有意に短縮した(−0.30時間、95%CI:-0.55to-0.05)。容量に問わずすべての患者を解析に含めると、イソソルビド群で日常生活の活動性は有意に低下していた(−439加速度単位、95%CI−792to−86)。イソソルビドの容量が増えると、有意に活動性は低下した。6分間歩行距離、QOLスコア、NT−proBNP値に差はなかった。

結論
イソソルビドを内服しているHFpEF患者では、活動性が低下し、QOLや運動能力も改善しなかった。

◯この論文のPICOはなにか
P:HFpEF
I:一硝酸イソソルビドの内服(イソソルビド群)
C:プラセボの内服(プラセボ群)
O:日常生活活動性(加速度単位)

inclusion criteria:50歳以上、安定した薬物療法を行っていること、LVEF≧50%で以下の項目をひとつ以上満たすこと(肺うっ血を伴った心不全で入院歴があること、安静時LVEDP≧15mmHg、安静時PCWP≧20mmHg、運動時PCWP≧25mmHg、NT−proBNP>400pg/ml、BNP>200pg/ml、ドップラーエコーにて拡張障害を認めること)

exclusion criteria:収縮期血圧110mmHg未満・180mmHg以上、硝酸薬やPDE-5阻害薬に対する有害事象や現在の使用

手順
6週間ごとのクロスオーバー。それぞれ、最初の2週間は投薬しない。1週間おきに1錠(イソソルビドなら30mg)ずつ増量する。毎週、副作用とコンプライアンスを確認する。

◯baseline
characteristics1
characteristics2

◯結果
esult
(tableはすべて本文から引用)

◯感想/批判的吟味
左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)では、硝酸薬により運動耐用能が改善する。HFpEFでも活動時にはLVEDPが著しく上昇するため、硝酸薬によりそれを抑えることで、活動性が改善しそうなものだが、結果はそれに反するものだった。