心筋疾患

敗血症誘発性心筋症(sepsis−induced cardiomyopathy)

A review of sepsis-induced cardiomyopathy.
J Intensive Care. 2015 Nov 11;3:48

敗血症誘発性心筋症は左室拡大、左室駆出率低下、7−10日で回復することが特徴。治療は、敗血症誘発性心筋症を伴なわない敗血症と同じ。

敗血症の死亡率とhyperkineticには相関がある。敗血症誘発性心筋症では左室壁運動はhypokineticかnormokineticなので、予後がいいかもしれない。より大きな試験が検証が必要である。

敗血症誘発性心筋症はたこつぼ型心筋症とは違う病態である。たこつぼ型心筋症では、左室基部は過収縮し、中間部から心尖部はakinesis・dyskinesisとなりballooningをきたすのが典型的である。敗血症誘発性心筋症はびまん性の左室壁運動異常であり、たこつぼ型心筋症とは左室壁運動異常のパターンが異なる。また、たこつぼ型心筋症は様々な基礎疾患で起こり病態生理学的に特定の病態によるものではないと考えられ、それも敗血症誘発性心筋症と異なる。

敗血症誘発性心筋症の診断基準はない。

BNPやトロポニンの上昇がみられるが、これは特異的なものではない。敗血症の43−85%にトロポニンの上昇がみられるが、トロポニンの上昇と死亡率とに相関があると報告したメタ解析がある。

敗血症誘発性心筋症の発症には、エンドトキシンやサイトカインなどが関与している。

ProCESS試験、ARISE試験、ProMiSe試験ではearly goal-directed therapyがアウトカムの改善に結びつかなかったことを報告している。

敗血症性ショックに関して。バソプレッシはノルアドレナリンと比較し90日死亡率を改善しなかった。低容量でノルアドレナリンに併用するのはよいが、単剤投与は推奨されない。ドブタミンは敗血症性ショックの死亡率を増加させる。β遮断薬は死亡率の改善につながるかもしれない。レボシメンダンはβ受容体を介さず心筋収縮力を増加させるため、ドブタミンと異なり死亡率を低下させるかもしれない。レボシメンダンやECMOが敗血症誘発性心筋症の生存率を改善するかどうかは、さらなる検証が必要。

◯感想
敗血症誘発性心筋症がたこつぼ型心筋症と異なる点として2つあげられている。左室の動き、そして基礎の病態が違うこと。左室の壁運動に関しては、経胸壁心エコーでは捉えられないこともある。左室造影で典型的なたこつぼ型心筋症と診断しても、心エコーでは判断できないことも経験する。そして、たこつぼ型心筋症も典型的なたこつぼの形態をしめすものだけではない。たこつぼ型心筋症は様々な基礎疾患を背景に発症するので、敗血症もそのひとつとしてとらえてもいいのではないかと思ってしまう。

あと、敗血症誘発性心筋症ではどう心電図が変化するかも気になるところ。