Aspirin in patients undergoing noncardiac surgery.
N Engl J Med. 2014 Apr 17;370(16):1494-503
背景
アスピリンを内服している場合でもそうでない場合でも、非心臓手術の周術期にアスピリンを内服するかどうかは一定しない。
方法
2×2要因デザインで、非心臓手術を行う予定の血管合併症のリスクを有する症例10010例を、アスピリンとプラセボ、クロニジンとプラセボに無作為に割り付けた。試験以前からアスピリンを内服しているかで層別化した(導入群5628例、継続例4382例)。導入群では、手術前にアスピリン200mgもしくはプラセボをローディングし、それを30日間継続する(アスピリン:100mg/日)。継続群では7日間継続し、それ以降はもとの用法用量に戻す。主要評価項目は、死亡と非致死的心筋梗塞である。
結果
主要評価項目は、アスピリン群で351/4998例(7.0%)、プラセボ群で355/5012例(7.1%)であった(HR:0.99、95%CI:0.86−1.15)。大出血はアスピリン群で多く認めた(4.6% vs 3.8%, HR1.23, 95%CI:1.01-1.49)。
結論
術前のアスピリンの投与は、死亡と非致死的心筋梗塞を減少させず、大出血を増加させる。
◯この論文のPICOはなにか
P:非心臓手術の術前の患者
I:アスピリンの内服(アスピリン群)
C:プラセボの内服(プラセボ群)
O:無作為化から30日間の死亡と非致死的心筋梗塞の複合エンドポイント
inclusion/exclusion criteriaは本文に記載なし。
手順
2×2要因デザイン。アスピリン+クロニジン、アスピリンプラセボ+クロニジン、アスピリン+クロニジンプラセボ、アスピリンプラセボ+クロニジンプラセボの4群に、1:1:1:1に割り付け。もともとアスピリンを内服していない導入群では、200mgをローディングし、100mg/日で30日間継続する。もともとアスピリンを内服している継続群では、100mg/日を7日間継続し、それ以降はもとの内服量に戻す。
◯結果
登録期間:2010年7月-2013年12月
(tableはすべて本文から引用)
◯感想/批判的吟味
・computerized internet systemによりランダム化。
・バイエル、ベーリンガーインゲルハイムがスポンサーだが、解析には加わっていない。
・primary endpointで有意差がついていないが、事前に定められた症例数(10000例)には達している(power84%、αlevel0.05、アスピリン群のHR0.75、プラセボ群のprimary endpointの発生6.1%)。
・ITT解析
・追跡率99.9%
10000例で有意差がつかないのであれば、周術期にアスピリンを内服させることの意義はないと考えていいだろう。AHAのガイドラインでも、冠動脈にステント留置を行っていない患者の非心臓手術でのアスピリンの導入や継続はclassⅢとなっている。