非心臓手術

術前の血行再建の有効性は非保護左主幹部病変でのみ認められる CARP試験とレジストリ

Usefulness of revascularization of patients with multivessel coronary artery disease before elective vascular surgery for abdominal aortic and peripheral occlusive disease.
Am J Cardiol. 2008;102:809-13

《要約》
CARP試験では、待期的な大血管手術の前に血行再建を行っても生命予後は変わらなかった。これが、冠動脈多枝病変でも当てはまるかは議論がある。CARP試験のスクリーニングの4年間で1048例に冠動脈造影が行われた。この集団はレジストリ586例と試験に登録された462例で、その中には2枝疾患204例(19.5%)、3枝疾患130例(12.4%)、LM病変48例(4.6%)が含まれていた。log-rank検定により、LM病変に対する術前血行再建で生存率の改善を認めたが(0.84 vs 0.52, P<0.01)、2枝疾患・3枝疾患では認められなかった。

◯この論文のPICOはなにか
P:腹部大動脈瘤・下肢動脈閉塞性疾患の手術を行う患者
I:術前に血行再建を行う
C:術前に血行再建を行わない
O:生存率

inclusion criteria:米国の退役軍人病院18施設でCARP試験の登録期間に大血管手術が行われた患者、
exclusion criteria:緊急手術、重篤な併存疾患

○観察期間はどれくらいか
2.5年であり、outcomeが生じるのに十分な観察期間である。

○結果に影響を及ぼすほどの脱落があるか
脱落なし。

○outcomeの観察者が危険因子についてmaskingされているか
記載はないが、outcomeの評価には影響がない。

○交絡因子の調整が行われているか
Cox比例ハザードモデルが用いられている。

○結果
生存率の改善が認められたのは、非保護左冠動脈主幹部病変のみ。HR:0.19(0.05−0.66)

◯感想/批判的吟味
2枝病変や3枝病変であっても、大血管手術の前の血行再建によって生存率は改善しない。唯一、生存率が改善する可能性があるのは、非保護左冠動脈主幹部病変のみである。ただ、この集団の非保護左冠動脈主幹部病変は48例と症例数は決して多くないため、さらなる検証は必要。