β-Blockade and Operative Mortality in Noncardiac Surgery: Harmful or Helpful?
JAMA Surg. 2015 Jul;150(7):658-63
重要性
非心臓手術で心筋虚血イベントリスクが低い患者に対するβ遮断薬の投与は、脳梗塞や低血圧などの副作用もあり、議論が分かれる。報告されているデータでは、リスクの低い患者に対するβ遮断薬の有益性は、一貫しない。
目標
非心臓手術、特に虚血リスクの低い患者への周術期のβ遮断薬の効果を検証すること。
デザイン・セッティング・参加者
2008年10月1日〜2013年7月31日の間に退役軍人病院で施行された外科的手術の後ろ向き観察研究である。
方法
手術8時間前から術後24時間までにオーダーあるものをβ遮断薬の使用と定義する。退役軍人データベースからデータ収集を行った。それらのデータには、診断と治療コード、薬物療法、周術期検査データ値、死亡日時が含まれる。心血管リスクスコアは、腎不全、冠動脈疾患、糖尿病、大手術の有無で計算される。線形回帰モデルで死亡率とオッズ比の計算を行った。
主要評価項目
術後30日以内の死亡率
結果
このコホートでは326489例(非心臓手術314114例、心臓手術12375例)の手術が施行されていた。3−4つのリスクを有している患者では、非心臓手術の際のβ遮断薬は死亡のオッズ比を低下させた(OR:0.63、95%CI:0.43−0.93)。1−2つのリスクの有する患者では、その効果は見出せなかったが、リスクのない患者では死亡率は有意に高かった(OR:1.19、95%CI:1.06−1.35)。
結論
非心臓手術を行う心血管イベントリスクの高い患者へのβ遮断薬は有効である。しかし、心血管イベントリスクのない患者に対するβ遮断薬の投与は、死亡のリスクを増大させる。
◯論文のPECOはなにか
P:非心臓手術が施行された患者
E/C:β遮断薬の有無
O:術後30日以内の死亡
inclusion criteria:2008年10月1日〜2013年7月31日の間に退役軍人病院で行われた手術
◯結果
デザイン:後ろ向き観察研究
登録期間:2008年10月1日〜2013年7月31日
フォローアップ期間:術後30日間
地域:米国
症例数:314114例
outcome観察者のmasking:影響なし
交絡因子の調整:ロジスティック回帰モデル
非心臓手術施行患者では、132614例(42.2%)でβ遮断薬が処方されていた。
◯感想/批判的吟味
・90%が男性と偏りがある。
・β遮断薬の開始時期が不明(手術直前か、以前からかわからない)
周術期のβ遮断薬は、心血管イベントリスクの高い患者に対しては有効であるが、リスクの低い患者ではむしろ有害である可能性。JAMA Intern Med. 2015 Dec 1;175(12):1923-31も同様に後ろ向きのデータではあるが、リスクのない患者へのβ遮断薬は周術期の死亡率を増加させる可能性がある。