A clinical randomized trial to evaluate the safety of a noninvasive approach in high-risk patients undergoing major vascular surgery: the DECREASE-V Pilot Study.
J Am Coll Cardiol. 2007;49:1763-9
◯この論文のPICOはなにか
P:腹部大動脈や下肢動脈の手術が予定されており、負荷試験にて広範囲の心筋虚血が証明された患者
I:術前に血行再建を行う(血行再建群)
C:薬物療法のみ(非血行再建群)
O:術後30日までの全死亡、非致死的心筋梗塞の複合エンドポイント
inclusion criteria:70歳以上、狭心症、陳旧性心筋梗塞(病歴、異常Q波)、代償性うっ血性心不全、糖尿病へ薬物療法、慢性腎臓病、脳血管障害の既往
手順:3つ以上のリスクファクターを持ち、負荷試験(ドブタミン負荷心エコー/ドブタミン負荷もしくはジピリダモール負荷心筋シンチグラム)によって広範囲の虚血が証明された患者を、血行再建群と非血行再建群に割り付ける。血行再建としてPCIとCABGのいずれを行うかは主治医が決定する。大血管手術後は1,3,7,30日後に血清トロポニンTの測定と心電図検査を行う。外来に3ヶ月おきに通院し、問診と心電図検査を行い1年間フォローアップする。
◯ランダム化されているか
computer algorithmによって割付を行う。封筒法を用いている。
◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢70歳、狭心症50%、心筋梗塞の既往100%、うっ血性心不全と脳血管障害が40%、β遮断薬70%、ACE阻害薬50%、スタチン60%、大腿-膝窩動脈手術が半分でもう半分はそれよりも近位部の手術、2枝疾患が1/4、3枝疾患が2/3、LM病変8%。
◯症例数は十分か
DECREASE-Ⅰ試験をもとにprimary endpoint33%、85%のリスク減少があると仮定し、power93%、αlevel5%として、必要症例数は100例と算出されている。血行再建群49例、非血行再建群52例の計101例が登録されている。
◯盲検化されているか
試験の性質上、open label。
◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
ITT解析。
◯感想/批判的吟味
CARP試験で予防的血行再建群と非血行再建群とで差がつかなかった理由には3つあると思う。それは、PCIもCABGも一緒くたにしていること、1VD・2VDとcoronary riskの小さい患者を対象にしていること、そして内的妥当性の問題(必要症例数の92%しか集まらず、割り付けられた血行再建を行わなかったのも87%いた)。
このDECREASE-V試験では、CARP試験と異なり3VDとLM病変で3/4を占めており、心イベントリスクの高い患者が対象になっている。そして、RCRIは記載されていないがbaseline characteristicsをみるに、平均で2−3ぐらいはあるのではないかと思う。ハイリスク手術で中等度以上のリスクを持った患者に対する予防的血行再建の有効性は示されなかった。こちらの方が先に行われた臨床試験だが、この試験と同じような対象で異なった結果であった。