Systematic strategy of prophylactic coronary angiography improve long-term outcome after major vascular surgery in medium- to high-risk patients
J Am Coll Cardiol. 2009;54:989-96
◯この論文のPICOはなにか
P:中等度から高度の手術リスク(RCRI≧2)を有し、大血管手術(腹部大動脈瘤:AAA、大動脈腸骨動脈閉塞)を予定されている患者
術前の血行再建の適応を
I:術前のルーチンの冠動脈造影検査によって判断する(systematic群)
C:非侵襲的検査後の冠動脈造影検査によって判断する(selective群)
O:MACE(非致死的心筋梗塞、脳血管障害、うっ血性心不全、再血行再建)
虚血評価のための非侵襲的検査は、ジピリダモール-タリウム心筋シンチグラム(aTS)とドブタミン負荷心エコーで行う。
血行再建と大血管手術は段階的に行われた。腹部大動脈瘤が6cm以上の場合と切迫破裂の場合は同時手術が行われた。PCIをベアメタルステントを用いて行われ、アスピリン100mg/日の内服に加え、クロピドグレル75mg/日もしくはチクロピジン250mg/日を内服し、手術はPCI後30−60日以内に行われた。手術7日前にクロピドグレルとチクロピジンは中止され、ヘパリンの投与が行われた。
◯ランダム化されているか
computer-genarated randomized listによって2群に分ける。
◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢73歳、1/4がNYHAⅢ/Ⅳ、1/4がCCSⅢ/Ⅳ、AAAと大動脈腸骨動脈閉塞が2:3、DM40%、1/3が虚血性心疾患、CABGの既往15%、脳血管障害20%、1/3がCr1.7mg/dl以上、RCRI3.3、ASA1.7。
血行再建を行った患者の10%がLM病変、40%が3枝病変であった。
◯症例数は十分か
CARP試験では2.7年のフォローアップ期間で、死亡率が血行再建群、非血行再建群でそれぞれ22%と23%で、30日以内のMACEが20%であった。よって、長期・30日後のMACEのリスク減少が10%あると仮定し、power80%、αlevel0.05として、必要症例数200例と算出されている(ただ、MACEをどれくらいと仮定したかは記載なし)。
◯盲検化されているか
試験の性質上、open label。
◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
ITT解析。
◯感想/批判的吟味
CARP試験では、この試験と同様に大血管手術を対象し、術前の血行再建によって周術期の心血管イベントを抑制することはできなかった。しかし、対象となった患者は左室機能が正常の1枝疾患・2枝疾患であり、この試験よりリスクの低い患者群を対象としている。この試験では3枝疾患とLM病変で半分を占めている。Nは小さいものの、死亡率もsystematic群が少ない傾向にあり(1.9% vs 6.8%, P=0.08)、ルーチンの冠動脈造影によって血行再建の適応を考慮した方が予後が改善する可能性がある。
大手術でかつ、患者のリスクも高い場合には、ルーチンの冠動脈造影検査を考慮すべき。