Cardiac Complications in Patients Undergoing Major Noncardiac Surgery
N Engl J Med 2015; 373:2258-2269
心臓合併症の術前予測
RCRIは簡便で実用的だけど、1990年代のデータで少し古い様。最近のコホート研究だと周術期の心臓合併症は以前に比べ増加している。日本循環器学会の非心臓手術のガイドライン(2014年度版)ではRCRI(revised cardiac risk index)での評価を勧めているが、RCRIよりNSQIP MICA indexの方が周術期の心臓合併症の予測には優れている。ただ、NSQIP MICA indexは、心筋梗塞を心電図変化(ST変化、CLBBB)のみで判断しているため、実際のリスクを過小評価しているかもしれいない。
周術期の心臓合併症のリスクが1%以上あり、検査の結果で方針が変わる場合にのみ術前の心臓の負荷検査を勧められる。しかし、メタ解析では周術期の心筋梗塞と死亡の1/3が術前のタリウムシンチで正常所見であった。
血管疾患を有する、あるいは血管疾患のリスクがある患者の非心臓手術の術前に、CCTA(coronary computed tomographic angiography)を行った前向きコホート研究では、主要評価項目である心血管死と非致死的心筋梗塞が74症例(7.7%)に起こり、RCRIのみを用いたリスク評価よりも優れていた(HR:3.76[95%CI:1.12-12.62])。ただ、CCTAでは患者のリスクを過大評価する可能性があり、それは不適切な血行再建や、手術時期が遅らせてしまうことにつながるかもしれない。
術前の介入
CARP試験が、術前の予防的血行再建の最も強力なデータである。CARP試験では冠動脈に70%以上の狭窄を1枝以上あり、待機的血管手術が行われる患者を対象にしている。UAP、LMT病変、LVEF<20%、severeASは除外されている。術前の予防的血行再建の有無で、長期予後は変わらなかった。CCSclassⅢ/Ⅳの狭心症の患者は術前に血行再建を行った方がいいかもしれない。
メタ解析では、β遮断薬は周術期の非致死的心筋梗塞を減少させるが、死亡や非致死的脳梗塞は増加させる。POISE試験では、低血圧が脳梗塞と死亡の強力な予後因子であった。POISE試験の結果は、β遮断薬の過量投与によるものであるという見解もあるが、ACC/AHAのメタ解析ではPOISE試験を除いても、β遮断薬によって死亡と脳梗塞が増加するという結果は変わりなかった。手術まで数週間の期間があればβ遮断薬の開始は妥当と考えられるが、どの程度の容量が適切なのかはわからず、また、低血圧は術後に起きるものである。
POISE2試験では、周術期にアスピリンを内服することのベネフィットは見出せなかった。