心筋疾患

非典型的たこつぼ心筋症の臨床像と転帰

Differences in the Clinical Profile and Outcomes of Typical and Atypical Takotsubo Syndrome: Data From the International Takotsubo Registry.
JAMA Cardiol. 2016;1(3):335-40.

◇論文の概要
<背景>
心尖部バルーニングは古典的なたこつぼ型心筋症(TC)と認識されている。非典型的なTCも存在しており、全症例の20%を占める。今まで、非典型的TCの臨床像と転帰についてはほとんど調べられていない。

<目的>
大規模なコホートで、典型的、非典型的TCの臨床像と転帰を調べること。

<デザイン、セッティング、患者>
・9ヶ国、26施設
・後向き(1998年〜2014年)
・1750例(典型的TC1430例、非典型的TC320例)


(本文から引用)
一番左が典型的なTC。右の3つは非典型的なTCで、中間部、基部、局在的なバルーニングが見られている。


(本文から引用。この論文では、たこつぼ型心筋症=TTSで表記されていますが、このブログではTCで統一しています。)
年齢は統計的には差があるが、SDも大きく、臨床的には差はなさそう。トリガーは身体的なものか感情的なものかで、バルーニングのパターンが異なるという報告もあり、このコホートでも非典型的TCで感情的なトリガーが多い傾向にあるが、有意差はない。典型的TCではST上昇がみられ、非典型的TCではST低下がみられる。非典型的TCの方が若く(ただしSDは大きい)、若干EFが良く、神経学的疾患が多い。

<結果>

(本文から引用)
1年後からのランドマーク解析では差が出ていないが、1年以内の死亡率は典型的TCで有意に多い。しかし、交絡因子の調整をすると差はなくなった。LVEF(<45%)、af、神経学的疾患が独立した危険因子である。

◇感想
非典型的TCは、典型的TCより若年発症で、ST低下が多く見られ、神経学的疾患の合併が多く、LVEFの低下が少なく、入院時のBNPが低い。典型的TCが一番血行動態への影響が大きそうだが、交絡因子の補正をすると典型的TCと非典型的TCでは、予後は変わらない。予後を規定するのは、LVEF(<45%)、af、神経学的疾患。