虚血性心疾患

ピモベンダンの運動能改善効果 PICO試験

Effect of pimobendan on exercise capacity in patients with heart failure: main results from the Pimobendan in Congestive Heart Failure (PICO) trial.
Heart. 1996 Sep;76(3):223-31.

《要約》
背景
慢性心不全患者において、ピモベンダン2.5mgまたは5mg/日を内服することの運動能に対する効果を検証する。

方法
欧州6カ国の循環器外来で行われ、従来の治療に加えピモベンダンを加える無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験である。最短フォローアップ期間は24週である。ACE阻害薬や利尿薬は内服している、運動能の低下した有症候性の心不全(EF<45%)317例を対象とした。 結果
2.5mg・5mgともにプラセボと比較し、24週後の運動時間を有意に6%増加させた。ピモベンダン群で63%が、プラセボ群で59%が少なくとも登録時と同程度の運動能であった(P=0.5)。酸素消費量とQOLに有意差はなかった。ピモベンダンには良好な忍容性があり、催不整脈性は認められなかった。ピモベンダン群ではプラセボ群に対する死亡のハザード比は1.8(95%CI:0.9−3.5)であった。

結論
ピモベンダンは従来の治療を行っている慢性心不全患者の運動能を改善する。この治療のリスクとベネフィットのバランスを確立する必要がある。

◯この論文のPICOはなにか
P:EF<45%でNYHAⅡ-Ⅲの慢性心不全 I:ピモベンダン2.5mgまたは5mg/日の内服(ピモベンダン群) C:プラセボの内服(プラセボ群) O:自転車エルゴメータを用いた運動時間(4、12、24週で測定) inclusion criteria:18歳以上、臨床的に安定していること、 exclusion criteria:狭窄症、閉塞性心疾患、感染性心疾患、狭心症による運動能制限、心移植待ち、3ヶ月以内の失神や心停止の既往、ICD移植術後、腎疾患・肝疾患、循環動態に影響のある肺塞栓症、重症の肺疾患など ◯baselineは同等か 群間差はない。 β遮断薬の使用は認められていない(この試験がおこなわれているときは、まだ標準的治療ではなかった様)。 characteristics

◯結果
期間は1993年3月から1994年6月。
92%の患者で運動能の評価を行った。
4,12,24週後の運動時間の増加は、ピモベンダン2.5mg群で13,27,29秒、ピモベンダン5mg群で19,17,28秒であった。
死亡は、有意差はないがプラセボと比較しピモベンダン群で増加する傾向にある。
result

◯感想/批判的吟味
・無作為化、二重盲検、プラセボ対象試験
・ITT解析
・outcome評価者の盲検化については記載がないが、運動時間という客観的なendpointを用いている。

baselineの運動時間が7分程度。24ヶ月の時点でピモベンダンによる運動時間の増加が30秒程度。これを臨床的に意味のある差ととるかどうかは主治医と患者次第ではあるが、死亡が増加する傾向にあることは認識しておくべき。