心不全

ピモベンダンは心不全増悪による入院を抑制する EPOCH試験

Effects of pimobendan on adverse cardiac events and physical activities in patients with mild to moderate chronic heart failure: the effects of pimobendan on chronic heart failure study (EPOCH study).
Circ J. 2002 Feb;66(2):149-57.

《要約》
慢性心不全に対する長期のピモベンダンの効果は確立されていない。EF<45%で至適薬物療法を行っているいの関わらずNYHAⅡ−Ⅲの安定した慢性心不全306例を、二重盲検化し52週までフォローアップした。52週目までで有害事象(primary endpontの発生)は、ピモベンダン群で19例(15.9%)、プラセボ群で33例(26.3%)であった。プラセボ群に対するピモベンダン群の累積的な心臓の有害事象は、45%低かった(ハザード比の95%CI:0.31−0.97)。死亡と心臓が原因の入院はピモベンダン群で12例(10.1%)、プラセボ群で19例(15.3%)であったが、有意差はなかった。ピモベンダン群でbaselineでのSpecific Activity Scale score(SASスコア)が4.39±0.12、52週時で4.68±0.15と増加していた(P<0.05)。長期のピモベンダンの使用は、軽度から中等度の慢性心不全患者の罹患率を低下させ、運動能を改善させる。

◯この論文のPICOはなにか
P:EF<45%でNYHAⅡ-Ⅲの慢性心不全
I:ピモベンダンの内服(ピモンベンダン群)
C:プラセボの内服(プラセボ群)
O:心不全死、心臓突然死、不整脈死、心不全増悪による入院の複合エンドポイント
(secondary endpointは、SAS質問表による1Mets以上の運動耐用能上昇、心不全増悪による薬剤の追加・変更、非心臓死)

inclusion criteria:20−85歳、臨床的に安定していること、至適薬物療法でも症状が残存していること
exclusion criteria:重症の心室性または心房性不整脈、高度房室ブロック、狭窄症、閉塞性または感染性心疾患、3ヶ月以内の心筋梗塞の既往、重症の脳血管疾患・呼吸器疾患・肝疾患・腎疾患・血液疾患、妊婦、授乳婦

◯baselineは同等か
baselineの群間差についての記載なし。
ただ、ぱっと見ではほとんど差はなさそう。
baseline

◯結果
登録は1995年12月から1998年9月まで。
ピモベンダンは、2.5mg分2で開始し忍容性があれば5mg分2に増量した。

ピモベンダン群 vs プラセボ群(95%CI)
primary endpoint:10.1% vs 15.3%(0.30−1.29)
primary endpoint + secondary endpoint:15.9% vs 26.3%(0.31-0.97)

result
primary endpointは、心臓死に差はなく、心不全入院で差がついている。

◯感想/批判的吟味
・二重盲検無作為化試験
・追跡率98.9%
・ITT解析
・primary endpointでは有意差なし
・必要症例数をprimary endpointとsecondary endpointを合わせて算出されている。

primary endpointで有意差がないため、必要症例数に達しているか確認する必要があるが、事前に定められた症例数はprimary endpointとsecondary endpointを合わせて算出されており、その症例数は満たしている(プラセボ群のrimary endpointとsecondary endpointの発生が27−29%、ハザード比0.4−0.5、αlevel5%、power80%)。これは症例数の算出方法として、あまり見かけない方法だと思う。