COPDと冠動脈疾患を合併している場合、必要があればいずれの疾患に対しても治療を行うことになる。冠動脈疾患に対しては、カルベジロールよりβ1選択性が高いビソプロロールが望ましい。COPDに対しては、LABAやLAMAを用いる。
LABAやLAMAの心血管に対する悪影響ははっきりと結論が出ていないが、開始早期には注意が必要かもしれない。
Association of Cardiovascular Risk With Inhaled Long-Acting Bronchodilators in Patients With Chronic Obstructive Pulmonary Disease: A Nested Case-Control Study.
JAMA Intern Med. 2018;178(2):229-238.
台湾の保険データベースを利用して、LABAとLAMAの処方の開始が心血管リスクを上昇させるのか調べた研究。
【PECO】
P:40歳以上のCOPD
E/C:LABA、またはLAMAの新規の処方
O:心血管イベント(冠動脈疾患、心不全、不整脈、虚血性脳卒中)
LABA=サルメテロール(セレベント)、ホルモテロール(オーキシス)
LAMA=チオトロピウム(スピリーバ)
イプラトロピウム(アトロベント)
【デザイン、セッティング】
・台湾の保険データベース(the Taiwan National Health Insurance Research Database)
・ケースコントロールスタディ
・期間:2007年1月1日〜2011年12月31日
・新規でLABA・LAMAを処方された284220例のうち、ケース37719例とそれにマッチさせたコントロール146139例
・観察期間:2.0年(中央値)
【結果】
primary endpoint
調整オッズ比(95%CI)
LABA
・サルメテロール 1.49(1.31−1.69)
・ホルモテロール 1.52(1.25−1.85)
・LABA+ICS 1.51(1.36−1.68)
・LABA+イプラトロピウム 1.42(1.19−1.70)
LAMA
・LAMAonly 1.58(1.19−2.11)
・LAMA+SABA 1.39(1.04−1.87)
・LAMA+イプラトロピウム 1.47(1.16−1.86)
感度分析では、心血管疾患やCOPD増悪の既往によらず、リスクは増大していた。
【まとめと感想】
LABAでもLAMAでも、処方開始して30日以内の心血管疾患発症リスクは1.5倍ぐらい高くなる。循環器内科医としては、冠動脈疾患や心不全の治療をしっかりやってからと思うが、心血管疾患の有無によらず同じようにリスクが増えるなら、予防の仕様がないのかも。