Ezetimibe Added to Statin Therapy after Acute Coronary Syndromes
N Engl J Med. 2015;372:2387-97
背景
スタチン療法はLDLコレステロール値と心血管イベントを減少させる。しかし、今日からのコレステロールの吸収を抑制するエゼチミブを追加することで、心血管イベントをさらに抑制できるかは定かではない。
方法
急性冠症候群(ACS)による入院10日以内で、かつLDL50−100mg/dlの脂質降下療法を行っている患者、もしくはLDL50−125mg/dlの脂質降下療法を行っていない患者を対象として、18144例を対象に二重盲検無作為化試験を行った。シンバスタチン40mgとエゼチミブ10mgの併用と、シンバスタチン40mgとプラセボの併用を比較した。primary endpointは心血管死、非致死的心筋梗塞、不安定狭心症による入院、無作為化から30日以降の再血行再建、非致死的脳梗塞の複合エンドポイントとした。フォローアップ期間の中央値は6年である。
結果
試験期間中の平均LDLコレステロール値の中央値は、シンバスタチン-エゼチミブ群で53.7mg/dl、シンバスタチン単独療法群で69.5mg/dlであった(P<o.oo1)。7年間のイベント発症率はシンバスタチン-エゼチミブ群で32.7%、シンバスタチン単独療法群で34.7%であった(ハザード比0.936, 95%CI:0.89-0.99)。筋肉、堪能、肝臓の有害事象や悪性腫瘍は両群間で差はなかった。
結論
スタチン療法にエゼチミブを加えることで、さらにLDLコレステロール値が低下し、心血管イベントが抑制される。さらに、付加的な効果もある。
◯この論文のPICOはなにか
P:ACS患者
I:シンバスタチン40mgに加えてエゼチミブ10mgを内服(エゼチミブ併用群)
C:シンバスタチン40mgの単独療法(単独療法群)
O:心臓血管死、非致死的心筋梗塞、不安定狭心症による入院、無作為化から30日以降の再血行再建、非致死的脳梗塞の複合エンドポイント。
inclusion criteria:50歳以上、急性冠症候群(ACS)による入院10日以内で、かつLDL50−100mg/dlの脂質降下療法を行っている患者、もしくはLDL50−125mg/dlの脂質降下療法を行っていない患者、
exclusion criteria:冠動脈バイパス術が予定されてる患者、CCr<30ml/min、活動性肝疾患、シンバスタチン40mg以上の使用、
手順:ACS発症24時間以内にLDLコレステロールを測定する。ACSに対して標準的治療を行い、エゼチミブ併用群と単独療法群とに、1:1に無作為に割り付け、二重盲検化する。無作為化は階層化して行う。フォローアップは30日後、4ヶ月後、それ以降は4ヶ月おきに行う。内服を中断した場合は電話でのフォローアップを行う。採血は1,4,8,12ヶ月に行う。2回連続でLDLコレステロールが79mg/dl以上だった場合には、二重盲検した状態でシンバスタチンを80mgに増量する。LDLコレステロールが100mg/dlを切らない場合には、別の治療に変更する。
◯ランダム化されているか
randomizationと記載があるが、本文にはその方法についての記載はない。
◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢63歳、3/4が男性、BMI28、アジア人5%、DM27%、うっ血性心不全と末梢動脈疾患が5%ずつ、1/5にOMIあり、CABG9%、CCr84ml/min、STEMI:NSTEMI:UAP=1:2:1、平均LDL93mg/dl、DAPT・βblockerは90%弱、ACEI/ARB75%。
◯症例数は十分か
power90%で相対リスク9.375%低下を検出するために、primary endpointが5250イベント発生する必要がある。5250イベント発生するまで最低2.5年フォローする。必要症例数がいくつかの明示はない(試験途中でサンプルサイズの変更が行われたためかと思われる)。
◯盲検化されているか
患者、治療介入者、outcome評価者は盲検化されている。
◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
ITT解析。
◯結果
1年の時点で、LDLコレステロール値はエゼチミブ併用群で53.7mg/dl、単独療法群で69.9mg/dlと24%の低下を認めた。
primary endpointは以下の通り。
(本文より引用)
◯感想/批判的吟味
・試験期間中にサンプルサイズなど5回のprotocol変更を行っている。
・そもそもエゼチミブを追加するのではなく、ストロングスタチンを使用したらいいのではないか。
・これは二次予防のためのエゼチミブ併用療法だが、心筋梗塞一次予防も含めたコルヒチンのデータの方が明らかに心筋梗塞を抑制している。
・非致死的心筋梗塞、虚血性脳卒中、緊急血行再建を有意に低下させているが、実際のパーセンテージとしては大きくなく、N=180000と大規模に行われた試験ゆえについた差だと思う。
・アジア人は5%しか含まれていない。
・あえてエゼチミブを使用する意味は感じない。