Clinical outcomes in patients with ST-segment elevation myocardial infarction treated with everolimus-eluting stents versus bare-metal stents (EXAMINATION): 5-year results of a randomised trial.
Lancet. 2015 Oct 28 [Epub ahead of print]
背景
第2世代薬剤溶出性ステント(DES)の安全性と有効性のデータは、特にST上昇型心筋梗塞(STEMI)で十分でない。EXAMINATION試験において、STEMI患者を対象にエベロリムス溶出性ステント(EES=XienceVステント)とベアメタルステント(BMS)を比較し、5年間のアウトカムと評価した。
方法
イタリア、スペイン、オランダの多施設共同研究。中央割り付け方式で、STEMIをXienceとBMSの1:1に無作為に割り付けた。患者の盲検化を行った。5年間の全死亡、心筋梗塞、再血行再建の複合エンドポイントを評価し、結果はITT解析を行った。
結果
1498例(Xience群751例、BMS群747例)を無作為化し、Xience群731例、BMS群727例が完全にフォローアップできた(フォローアップ率は両群とも97%)。primary endpointはXience群159例(21%)、BMS群192例(26%)、HR0.80(95%CI0.65−0.98)であった。その差は主に全死亡による差であった(65例[9%]vs88例[12%], HR0.72 P=0.047)。
◯この論文のPICOはなにか
P:STEMI(all-comers)
I:EES=Xience Vステントを使用(Xience群)
C:BMS=Multilink Visionステントを使用(BMS群)
O:全死亡、心筋梗塞、再血行再建の複合エンドポイント
inclusion criteria:発症48時間以内、肢誘導の2誘導以上で少なくとも1mm以上のST上昇、胸部誘導の連続する2誘導以上で少なくとも2mm以上のST上昇、新規の完全左脚ブロック、血管径2.25−4.00mm。
exclusion criteria:18歳未満、妊娠、ワルファリンの内服、ステント血栓症によるSTEMI、アスピリン・クロピドグレル・ヘパリン・ステンレス鋼・エベロリムス・造影剤に対するアレルギー。フォローアップは30日後、6ヶ月後、1年後、以降5年後まで毎年行う。
手順:未分画ヘパリンまたはビバリルジンで抗凝固を行う。GPⅡb/Ⅲa阻害薬の使用はオペレータに委ねる。抗血小板療法のローディングが必要な場合、アスピリン250−500mg、クロピドグレル300mg以上を使用する。アスピリン100mg/日とクロピドグレル75mg/日の内服は少なくとも1年間は継続する。血栓吸引とダイレクトステンティングが推奨されるが、必要に応じて他のデバイスの使用も可。
◯ランダム化されているか
computer-generated, central randoisation(by telephone)
◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢60歳、DM18%、高脂血症40%、primary PCI(<12h)85%, killipⅠ89%、ステントオーバーラップ26%、ステント数1.4本、ステント長23mm、TIMI3 after PCI92%、5年間のDAPT継続10%。
◯症例数は十分か
30%のリスク減少(Xience群14.5%、BMS群20.5%)と仮定し、αlevel0.05、power86%とし、必要症例数は1500例と算出している。Xience群751例、BMS群747例が無作為化されている。
◯盲検化されているか
試験の性質上、治療介入者は盲検化できないが、患者は盲検化している。
◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
ITT解析が行われている。脱落率は3%。
◯感想/批判的吟味
STEMIにおいて、第2世代DESとBMSを無作為比較した試験の長期の成績である。5年間で、ステント血栓症や標的血管心筋梗塞などの遅発性イベントを増加させず、全死亡や再血行再建を減少させた。全死亡の内訳としては、心臓死や血管死では有意差なく、非心臓死を減少させる結果であったが、これはどう解釈すればよいのだろうか。統計学的有意差がついているため偶然ではないのだろうが、薬剤溶出性ステントにより非心臓死が減少する理由がわからない。Discussionでは、ステント留置後早期のステント血栓症や再血行再建の減少が、左心機能を維持することにつながり、それがさらなる合併症(感染症や敗血症など)を抑制したのではないかと考察されているが推測の域を出ない。