虚血性心疾患

NORSTENT試験 DESはBMSより再血行再建やステント血栓症が少ない

Drug-Eluting or Bare-Metal Stents for Coronary Artery Disease
N Engl J Med 2016; 375:1242-1252

《要約》
背景
現在使用されている薬剤溶出性ステント(DES)やベアメタルステント(BMS)での、死亡率、心筋梗塞、再血行再建、ステント血栓症、QOLについての長期成績のデータは限られている。

方法
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を行う安定狭心症、または不安定な冠動脈疾患9013例を、DESもしくはBMSの留置に無作為に割り付けた。DESが留置された集団では、96%がエベロリムス溶出性ステント(EES)またはゾタロリムス溶出性ステント(ZES)が使用された。主要評価項目は、全死亡、自然発生の非致死的心筋梗塞で、フォローアップ期間は5年(中央値)である。副次評価項目は、再血行再建、ステント血栓症、QOLである。

結果
6年間で、主要評価項目は、DES群で16.6%、BMS群で17.1%であった(HR:0.98、95%CI:0.88−1.09)。主要評価項目に有意差はなかった。再血行再建は、DES群では16.5%、BMS群では19.8%(HR:0.76、95%CI:0.69−0.85)、明確なステント血栓症は、DES群で0.8%、BMS群で1.2%であった(P=0.0498)。QOLに有意差はなかった。

結論
DESあるいはBMSを用いたPCIでは、死亡と自然発生の心筋梗塞の複合エンドポイントに有意差はなかった。再血行再建はDES群で有意に少なかった。

◯この論文のPICOはなにか
P:安定狭心症、または急性冠症候群
I:DESを用いたPCI
C:BMSを用いたPCI
O:全死亡と自然発生の非致死的心筋梗塞

inclusion criteria:18歳以上、nativeまたはgraftへのPCI
exclusion criteria:以前ステントを留置されている患者、2stent techniqueを要する分岐部病変、併存疾患により生命予後が5年以内の患者、他の無作為化試験に登録されている患者、DAPT禁忌、ワルファリンの使用

◯手順
PCIは標準的手技で行う。病変が複数ある場合は、いずれも同じタイプのステントを使用する。DAPTはアスピリン75mg/日、クロピドグレル75mg/日とし、9ヶ月継続する。ガイドラインに基づき、二次予防を行う。フォローアップ期間中に再血行再建を行う場合は、割り付けられたタイプのステントを使用することを推奨する。再狭窄は術者の裁量で、POBA、カッティングバルーン、DESの組み合わせにより治療する。ルーチンでフォローアップのCAGは行わない。

◯baselineは同等か
characteristics
ステント長、病変タイプ(Type B2,C)、グラフトに病変を有する患者の割合に群間差あり。

◯結果
地域:ノルウェー
登録期間:2008年9月15日〜2011年2月14日
観察期間:59ヶ月(中央値)
無作為化:施設ごとの層別化、ブロック無作為化、computer-generated random numberを用いる。
盲検化:オープンラベル
必要症例数:8000例(BMS群での主要評価項目の発生は5年間で17%、DES群では3パーセンテージポイントのイベント減少、power93%、αlevel0.05として算出)
症例数:9013例(DES群:4504例、BMS群:4509例)
追跡率:100%
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与はなさそう。

result
kaplan-meier

◯感想/批判的吟味
安定狭心症や急性冠症候群に対するPCIで、DESを使用してもBMSを使用しても、全死亡、自然発生の心筋梗塞に有意な差はない。ほぼ同程度である。ただ、再血行再建はBMSで多く、最初の1年で差をつけ、その後は平行線といった感じ。しかし、これはオープンラベルでソフトエンドポイントなので、バイアスが入り込んでいる可能性は十分にある(TLRだけでなく、any PCIからTLRを差し引いたものでもBMS群が多い)。ステント血栓症はBMSでも5年で1.2%なので決して多いというわけではないが、DESでは0.8%と有意に少なく、DESの安全性を示している。