心臓手術

ROOBY試験 OPCABの5年生存率はon-pump CABGに劣る

CABGの方法としては、心拍動下で行うoff-pumpCABG(OPCAB)と人工心肺を用いたon-pumpCABGがある。周術期の脳梗塞はoff-pumpで少なくなることが期待できるが、グラフト開存率はon-pumpの方が良いと言われている。

off-pumpとon-pumpのCABGを比較したRCTはいくつかある。ドイツの75際以上の高齢者を対象としたGOPCABE試験では、早期の血行再建はoff-pump群で多いものの、1年後の死亡率に差はなく、CORONARY試験でも同様に早期の血行再建はoff-pumpで多かったが、5年生存率に差はなかった(1−2)。

このROOBY試験では、1年後のMACEはoff-pump群で有意に多く(9.9%vs7.4%)、グラフト開存率も悪いことが以前報告されていた(3)。これは、その5年のフォローアップ。

Five-Year Outcomes after On-Pump and Off-Pump Coronary-Artery Bypass.
N Engl J Med. 2017;377(7):623-632

◇この論文のPICOはなにか
P:冠動脈疾患
I:心拍動下冠動脈バイパス術(off-pump群)
C:心停止下冠動脈バイパス術(on-pump群)
O:全死亡とMACE(全死亡、再血行再建、非致死的心筋梗塞)

inclusion criteria:緊急もしくは待機的なCABG、CABGのみ行う症例
exclusion criteria:臨床的に有意な弁膜症

◇試験の概要
デザイン:RCT
地域:アメリカ
登録期間:2002年2月〜2007年6月
観察期間:5年
盲検化:患者のみ
必要症例数:2200例(詳細不明。死亡率はoff-pump15%, on-pump群10%?)
症例数:2203例(off-pump群1104例、on-pump群1099例)
解析:ITT解析とPP解析
スポンサー:企業の関与なし

◇患者背景

(本文から引用)

両群に差はない。
婚姻状況も調べられている。

◇結果
外科医のoff-pumpCABG経験数は、平均120例(中央値50例)。


(本文から引用)

全死亡もMACEもoff-pump群で有意に多い。


(本文から引用)

conversionした症例を除外した感度分析(PP解析)。off-pump群で137例、on-pump群で40例がconversion。両群ともにconversionした症例でのイベントの発現が多いため、有意差がなくなる。

◇批判的吟味
・独身男性だと予後は悪くなるが、characteristicsで婚姻状況も調べられている試験はあまり見かけない。
・off-pump群でon-pumpへのconversionが多く、5年後の死亡率は27.0%(37/137例)と高い。術中のconversionが多かったのだろうか。
・off-pumpCABGの経験数は、CORONARY試験やGOPCABE試験と比べると少ない。

◇感想
このROOBY試験では、5年死亡率率はoff-pumpで有意に高く、それはconversion(on-pumpへの切り替え)が多いことが影響していそう。conversionした症例の5年死亡率は27.0%と高く、おそらく術中のconversionが多かったと考えられる。

一方、CORONARY試験では、conversionは両群で6−7%程度であり、5年生存率には差がなかった(年齢、心機能、糖尿病など患者背景は、ROOBY試験の方が軽い印象)。

つまり、術者の経験が十分であれば、off-pumpでもon-pumpでも5年生存率に差はないと考えていいかもしれない。ただ、より長期のアウトカムについてはまだわからず、今後検証されるだろう。

(1)N Engl J Med 2013;368:1189-1198
(2)N Engl J Med 2016;375:2359-2368
(3)N Engl J Med 2009;361:1827-1837