ESICMの早期経腸栄養に関するエキスパートオピニオン。
Early enteral nutrition in critically ill patients: ESICM clinical practice guidelines
Intensive Care Med. 2017 Mar;43(3):380-398.
一般的な原則と注意点
・低速(10−20ml/h)から開始し、消化器症状に注意する。
・腹痛、腹部膨満、腹腔内圧上昇を認めた場合には経腸栄養を増やさない。症状が重篤な場合や腸管虚血などの場合には減量中止を。
・最適なカロリー、蛋白量はわからないが、カロリー過多は害で、少ない方が安全。
・胃貯留があり、他に異常がなければ、腸管運動促進薬や幽門後チューブ留置を。
・経腸栄養の開始・増量時には腹腔内圧測定を。
・意識障害や嚥下障害がある場合には、幽門後チューブ留置などの予防を。
推奨
・経静脈栄養より経腸栄養(死亡率は変わらないが、感染は少ない。HR:0.55、95%CI:0.35−0.86)。
・経腸栄養は遅らせるより、早期(48時間以内)に開始した方が感染が少ない(HR:0.64、95%CI:0.46−0.90)。
早期経腸栄養が良い
・ECMO下、外傷性脳損傷、脳梗塞、脊髄損傷、重症急性膵炎、消化管手術や腹部大動脈手術の術後、腹部外傷(腸管が大丈夫なら)、open abdomen。
腸管虚血や通過障害がないなら腸蠕動音に関わらず早期経腸栄養を。
・筋弛緩薬の使用のみ、伏臥位のみでは経腸栄養を遅らせる理由にならない。
・体温管理療法下では低速での経腸栄養を。
経腸栄養を遅らせた方が良い
・ショックや臓器灌流障害があれば、輸液や昇圧剤でコントロールがつくまで経腸栄養開始を遅らせる。ただし、多量の昇圧剤(ノルアドレナリン1γ以上)、高乳酸血症の持続などがある場合はその限りではない。
・コントロール不良の低酸素血症、高二酸化炭素血症、アシドーシス、腸管虚血、腹部コンパートメント症候群、胃からの排液500ml/6h以上。
上部消化管出血のときは出血が確認できるまで待つ。