集中治療

重症患者のストレス潰瘍予防に最も効果が高いのはPPIだが、院内肺炎は増える

ストレス潰瘍は重症患者で問題となる。多くは胃体部・胃底部にできるが、幽門部・十二指腸・食道下部にできることもある。

予防をしないと、1.5−15%ぐらいで起こるという報告がある(1−3)。ただ、これは内視鏡的な診断や、輸血が必要になるなどの臨床的に診断するものなど診断方法がまちまちなので、ストレス潰瘍でないものを多く含んだ数字かもしれない(15%というのは多い気がする)。

ショック、敗血症、48時間以上の人工呼吸器管理、凝固障害(PLT<5万、PT-INR>1.5、APTT>2倍)、消化性潰瘍の既往、外傷などがリスク。

胃酸の抑制がその予防になるが、PPIはH2RAより消化管出血を抑えるが、肺炎、クロストリジウム・ディフィシル感染症を増やす可能性がある。

そして、これはストレス潰瘍予防の薬剤についてのネットワークメタ解析である。

Efficacy and safety of stress ulcer prophylaxis in critically ill patients: a network meta-analysis of randomized trials.
Intensive Care Med. 2018 Jan;44(1):1-11.

【PICO】
P:重症患者
I/C:PPI、H2RA、スクラルファート、プラセボの内服
O:消化管出血、肺炎、死亡率、クロストリジウム・ディフィシル感染症の発生

<研究の選択>
組み入れた試験:57RCT、7293例
文献データベース:Cochrane CENTRAL, MEDLINE, EMBASE
期間:2017年4月まで
研究の種類:RCTのみ
funnel plot:なし
スポンサー:企業の関与なし

【結果】
PPI、H2RA、スクラルファート、プラセボをそれぞれ比較。

<臨床的に重大な消化管出血>
H2RAとプラセボ、スクラルファートとプラセボは有意差なし。
PPIvsH2RAだと、ARR:0.8%、オッズ比0.38(95%CI:0.20−0.78)
PPIvsスクラルファートだと、ARR:1.2%、オッズ比0.30(95%CI:0.13−0.69)

<肺炎>
PPIとH2RA・プラセボとの比較では、PPIと有意差はない。
ORはそれぞれ、1.27(95%CI:0.96-1.68)、1.52(95%CI:0.95−2.42)。

スルラルファートとの比較では、PPIが3.6%(95%CI:1.1−7.0)有意に肺炎を増やす。

<死亡率>
いずれも比較でも、有意な差はない。

<クロストリジウム・ディフィル感染症>
試験が1つしかなく、ネットワークメタ解析できなかった。

◇まとめと感想
ストレス潰瘍予防の薬剤として、PPIはもっとも効果に優れるが、院内肺炎は増やしてしまうかもしれない。絶対リスク減少・リスク増加をみると、消化管出血を減らし多分、肺炎が増えている感じ。いいのやら、悪いのやら。

(1)N Engl J Med. 1994;330(6):377.
(2)Ann Intern Med. 1987;106(4):562.
(3)Ann Intern Med. 1994;121(8):568.