集中治療

敗血症性ショック+AKIに対する腎代替療法導入を急ぐか否か

Timing of Renal-Replacement Therapy in Patients with Acute Kidney Injury and Sepsis
N Engl J Med 2018; 379:1431-1442

【PICO】
P:AKIを合併した発症早期の敗血症性ショック
I:早期の腎代替療法(RRT)導入
C:晩期のRRT導入
O:90日死亡率

・AKI発症から48時間以内。
・AKIはRIFLE基準のfailure=Crがベースラインから3倍、Cr>4mg/dlで0.5mg/dl以上の急激な増加、尿量<0.3ml/hが24時間以上持続、12時間無尿。
・早期は12時間以内、晩期は48時間後にRRT導入。
・晩期RRT群に割り付けられた患者は、慎重にモニタリング(K>6.5mmol/L、pH<7.15、利尿薬抵抗性の肺水腫があれば緊急RRT)。
・晩期RRT群では、Cr低下と尿量増加(1000ml/日以上、利尿薬を使用している場合は2000ml/日以上)があればRRT導入を見送る。
・RRTの方法(持続か間欠的か、HFかHDかHDFか、透析量など)は主治医任せ。

exclusion criteria:維持透析患者、緊急透析が必要(K>6.5mmol/L、pH<7.15、利尿薬抵抗性の肺水腫があれば緊急RRT)

【試験の概要】
デザイン:open label RCT
地域:フランス 多施設(29ICU)
登録期間:2012年7月〜2016年10月
観察期間:90日
症例数:488例(早期RRT群:246例、晩期242例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【結果】
中間解析で早期中止(early termination for futility)。

RRTをやったのは、早期RRT群で97%、晩期RRT群で62%(RRTをやらなかった38%のうち75%は腎機能は自然に回復)。

早期RRT群 vs 晩期RRT群
▶︎90日死亡率(primary endpoint)
58% vs 54% P=0.38

▶︎28日死亡率
45% vs 42% P=0.48

▶︎RRT free days
12日 vs 16日 P=0.006

▶︎90日時点でのRRT依存
2% vs 3% P=1.00

【まとめと感想】
敗血症性ショックで、AKI発症早期にRRTを導入することは生存率を改善しない。RIFLE基準でfailureになってもちょっと待てばRRT導入を回避できる症例もあるし、導入が遅くなってもRRTの離脱には影響しない。

このIDEAL-ICU試験同様、RRT導入のタイミングについて検証したRCTにAKIKI試験がある。人工呼吸器やカテコラミンを要するAKI患者で、早期群はすぐにRRT導入、晩期群は高K血症、代謝性アシドーシス、高窒素血症がひどくなったら導入。そのAKIKI試験でも60日死亡率の改善はなく、敗血症に限ったpost hoc解析でも差はなかった。

敗血症に合併したAKIのRRT導入は待って良い。